解説 IEC 60204-1

後から困らないために電気設計初心者が当然知っておくべき最初の関門。電気的危険源と採用できる電気部品。

IEC 60204-1:2016 とは

IEC 60204-1 とは下記の題名がついていて、機械の電気装置についての安全要求が記述されています。

Safety of machinery-Electrical equipment of machines- Part 1: General requirements

機械類の安全性−機械の電気装置− 第1部:一般要求事項

この規格はB 規格になり、機械指令と低電圧指令の両方の整合規格です。

IEC 60204-1 はJIS 規格 JIS B 9960-1:2019 と整合化され対訳されています。

規格の構造 B 規格: IEC 60204-1規格の構造 B 規格: IEC 60204-1

EN 60204-1:2018 との関係

  • EN 規格 には新しくEN 60204-1:2018 が加わりました。旧規格であるEN 60204-1:2006+A1:2009 は失効します。
  • 機械メーカーが欧州市場へすでに上市済の場合、規格更新をして、失効期日までにEN 60204-1: 2018 で製品の再評価を行い再宣言をする必要があります。
  • 旧規格EN 60204-1:2006+A1:2009 の評価がすでにある場合は、新しく変更になった差分だけを評価します。

CE マークを貼るために機械指令でEC 宣言する場合、その根拠として EN 60204-1:2018 を自己宣言書に記述します。

旧規格のままで自己宣言書を更新していな場合は気をつけましょう
ジュンイチロウ
ジュンイチロウ
規格更新わかっちゃいるけど、現実なかなか難しいですわwww

EN 60204-1:2006+A1:2009 失効日

EN 60204-1:2006+A1:2009 が失効する(失効した)日

  • 機械指令において 2021年10月2日
  • 低電圧指令において 2021年5月27日

新しいIEC 60204-1:2016 の変更点

新しいIEC 60204-1:2016 では、旧判の2006+A1:2009 年度版に比べて、主に下記の点が大きく変わったと記しています。

まえがき

(中略)

この版は,前の版に対して次の重要な技術的変更を行っている。

a) 駆動システム(PDS)のアプリケーションに対する要求事項を加えた。

b) 電磁両立性(EMC)に対する要求事項を変更した。

c) 過電流保護に対する要求事項を明確にした。

d) 短絡電流定格(SCCR)の決定に対する要求事項を変更した。

e) 保護ボンディングに対する要求事項及び用語を変更した。

f) PDSの安全なトルクオフ,非常停止及び制御回路保護を含めて,箇条9の再検討及び見直しを行った。

g) 制御機器のアクチュエータのための記号を変更した。

h) 技術文書の要求事項を変更した。

i) 国別の特別な規則,規定及び参考文献に対する通常の改正を行った。

出典 JIS B 9960-1:2019

リスクアセスメント担当者や電気設計者は正確を期すために規格書を参考にします。

本来IEC 60204-1:2016 英語版を持つべきですが、専門的な英語が並んでいるので、英語が苦手な方は難しいかもしれません。

そのためには、重要な規格が網羅され、すでに日本語に翻訳されているJIS ハンドブック 72 機械安全(2022) [ 日本規格協会 ] が必携です。

JIS ハンドブック 72 機械安全JIS ハンドブック 72 機械安全

 

1章 適用範囲

1章 Scope 適用範囲

1 適用範囲

この規格は,稼働中には手で運搬できない機械に用いる電気,電子及びプログラマブル電子の,装置及びシステムに適用する。連携して稼働する一群の機械も適用範囲に含む。

(中略)

この規格は,公称電源電圧が交流1 000 V以下,直流1 500 V以下,公称周波数200 Hz以下で作動する電気装置に適用する。

出典 JIS B 9960-1:2019

「機械」の定義

1章 適用範囲の要求の中で「機械」という言葉が出てきます。

機械の定義は ISO 12100 (3.1 項)、または、機械指令(第2条 (a)) に記述されています。

「機械の定義」は使いやすい方を選びます
ISO 12100 での「機械の定義」

3.1 機械類,機械(machinery, machine)

連結された部品又はコンポーネントで構成される駆動部分を備え,又は備えることを意図したものであって,構成要素である連結部品又はコンポーネントのうち,少なくとも一つは,特定の目的のために稼働し,かつ,協働するもの。

出典 JIS B 9700:2013

機械指令 2006/42/EC での「機械の定義」

第2条
定義(Definitions)
本指令では、「機械類」は第1条第1項(a)~(f)に掲げられた製品を指す。

以下の定義が適用されるものとする。

(a) 「機械類」とは、次のものをいう。
– 人力または動物を直接の動力源とするもの以外の駆動系に取り付けたり、取り付けることを意図されたもので、少なくとも一つのパーツまたは部品は可動であって、特定用途のために組み合わせられる接続パーツまたは部品の集まり

出典 国際安全衛生センター 資料 機械指令|95/16/ECの修正(書き直し)となる機械類に関する2006年5月17日付欧州議会・理事会指令2006/42/EC関連文書

中の人
中の人
実務ですが、〇〇測定器みたいな装置モノは IEC 61010-1 で評価することが多いので、IEC 60204-1 は電気系万能に使える規格ではありません。

IEC 60204-1 の目次

IEC 60204-1 で実際に使うところは4 章から18 章までです。

  • 4章 一般要求事項
  • 5章 入力電源導体の接続,断路器及び開路用機器
  • 6章 感電保護
  • 7章 装置の保護
  • 8章 等電位ボンディング
  • 9章 制御回路
  • 10章 オペレータインタフェース及び機械に取り付けた制御機器
  • 11章 コントロールギヤ:配置,取付け及びエンクロージャ
  • 12章 導体及びケーブル
  • 13章 配線
  • 14章 電動機及び関連装置
  • 15章 コンセント及び照明
  • 16章 一般
  • 17章 技術文書
  • 18章 検証
中の人
中の人
第三者認証機関で機械指令適合証を発行してもらう場合、100点を目指すことが必要となるので、かなりのボリューム感です(涙)

4 章 4.1 項 一般要求事項

4.1 項 一般要求事項でだいじなところ
  • IEC 60204-1 で想定する危険源は電気的危険源のみではなく、他の危険源も想定している
  • IEC 60204-1 のリスクアセスメントの手法は ISO 12100 と同様である

重要度
エンカウント
対策の難しさ
コメント rank D 4.1 項は概念なので読んで流す程度でじゅうぶん。機械全体のリスクアセスメントが難しいときは、第三者に依頼するのもアリ。

4.1 項 一般

4 一般要求事項

4.1 一般

この規格は,機械の電気装置に関する要求事項を規定している。

電気装置関連の危険源によるリスクは,機械のリスクアセスメントの全要求事項の一部として評価しなければならない

出典 JIS B 9960-1:2019

IEC 60204-1 だけのリスクアセスメントや評価だけでは、機械全体として安全を考えるにあったては不十分であるということです。

IEC 60204-1 でのリスクアセスメント

IEC 60204-1 もISO 12100 と同じようにリスクアセスメントをします。

ISO 12100 リスクアセスメントISO 12100 リスクアセスメント
中の人
中の人
「適切な性能」ということは、機械や装置の性能を犠牲にしてまで、徹底的にリスクゼロにまで持っていかなければならないということではありません
中の人
中の人
危険源にさらされる人が、受け入れ可能なリスクまで下げるということが大事ですね。リスクゼロはありえません。

リスクゼロと規格の構造についての解説は、ISO/IEC GUIDE51の解説記事を参照してください。

 

意外と知らない安全の定義。やばすぎるリスクゼロ。ISO/IEC GUIDE 51から知る新しい発見があなたの未来のリスクアセスメントに役立ちます。安全とはナニかと聞かれて、答えることができますか?安全とはリスクゼロではありません。この記事は本格的なリスクアセスメントの作業の前に知っておくべき内容を現役リスクアセスメントエンジニアが「安全の定義」と「規格の構造」ついてISO/IEC GUIDE 51 のガイドラインに基づいて解説します。...

 

IEC 60204-1 で想定する危険源とは

電気系の危険源をイメージすると、オペレーターの感電が分かりやすい例かもしれません。

IEC 60204-1 にはたくさんの危険源が想定されています。

4 一般要求事項

4.1 一般

(前略)

危険状態は,次の原因から起こり得るが,これらに限定するものではない。

− 感電,アーク又は火災を引き起こす可能性をもつ,電気装置の故障又は障害

− 機械の機能不良を引き起こす,制御回路(又は,その構成品及び機器)の故障又は障害

− 機械の機能不良を引き起こす,電力回路の故障又は障害,及び電源の変動又は停電

− 安全機能の故障を引き起こす,例えば,滑り接触回路又は転がり接触回路の導通不良

− 機械の機能不良を引き起こす,電気装置の外部又は内部で発生する電気的妨害(例えば,電磁妨害,静電気)

− 蓄積エネルギーの解放(電気的又は機械的)。例えば,感電又は傷害をもたらすような予期しない機械的動きを引き起こす。

− 人の健康を害するレベルの音響ノイズ及び機械的振動

− 傷害を引き起こし得る表面温度

出典 JIS B 9960-1:2019

IEC 60204-1 の想定する危険源

  • 電気機器の故障や障害
  • 制御部品の故障や障害
  • 電源の外乱や中断、もしくは、電源回路の故障や障害
  • 安全機能の故障を誘発する回路
  • 電磁波、雷、または、静電気などの電気的障害
  • 蓄積エネルギーの放出
  • 騒音や機械の振動
  • 表面温度
ジュンイチロウ
ジュンイチロウ
IEC 60204-1 は感電の話かと思っていましたww
中の人
中の人
IEC 60204-1 の目的は電気的な内容のみではなくて、いろいろな危険源からオペレーターを保護する目的があります

リスク低減方法について

ISO 12100 と同様にリスク低減方法が述べられています。

4 一般要求事項

4.1 一般

(前略)

安全方策は,電気装置供給者が装置の設計段階で組み込むものと,使用者が実施しなければならないものとの組合せである。

設計及び開発の過程で,危険源及びその危険源から生じるリスクを特定しなければならない。本質安全設計によって危険源を取り除くことができない場合及び/又はリスクを十分に低減できない場合は,リスク低減のために保護方策(例えば,安全防護物)を備えなければならない。さらに,リスク低減を必要とする場合は,追加手段(例えば,警告手段)を備えなければならない。これらの保護方策と保護手段とに加えて,リスクを低くするような作業手順が必要となる場合がある。

出典 JIS B 9960-1:2019

リスクアセスメント終了後、リスクを低減のステップに進んだ場合、設計者はいきなり警告ラベルなどを貼って警告するのではなく

  • 本質安全設計(例、電圧の変更)
  • 安全防護物 (例、保護ガード・保護インターロック・ライトカーテン)

などを使ってリスクを下げます。

どうしても、下がらない(取り切れない)リスクについては、警告ラベルを貼ったり、オペレーターへのトレーニングや作業手順書を作成して、リスクを下げます。

参考 IEC 60204-1 16章 警告ラベル

ISO 7010-W012 感電の危険を示すラベルISO 7010-W012 感電の危険を示すラベル
ISO 7010-W012 感電の危険

(通称: カミナリマーク)

ISO 7010-W017 高温表面の危険を示すラベルISO 7010-W017 高温表面の危険を示すラベル
ISO 7010-W017 高温表面の危険

(通称: 温泉マーク)

具体的なリスクアセスメント

電気的危険源へのリスクアセスメント

写真は交流880 V モーターの交流電源でスター・デルタ変換装置です。

考られる危険源はいくつかありますが、ここでは「オペレーターへの感電」を考えます。

  1. 機械の制限の決定 使用電圧: 交流880 V、毎月1回有資格者が点検する
  2. 危険源の同定  電気保全オペレーターが、むきだしのバスバー(導体)へ、直接接触し、感電する
  3. リスクの見積もり 重大なリスク
直接接触による感電の危険源がある電気制御盤直接接触による感電の危険源がある電気制御盤

安全化対策の例は:

  1. 本質安全設計   触っても安全な電圧まで下げる
  2. 付加保護方策   端子台やバスバーにIP2X のバリアを設ける、または、エンクロージャーにインターロックを設けて、電源が遮断されない限りエンクロージャの扉が開かないような構造にする

安全化対策の悪い例

オペレーターの直接接触による感電のおそれがある箇所に、感電の保護対策を実施せず、いきなり警告ラベルを貼り注意喚起をする対策

直接接触による感電の危険源がある電気制御盤の中に感電の危険を警告するラベルを貼った例直接接触による感電の危険源がある電気制御盤の中に感電の危険を警告するラベルを貼った例
中の人
中の人
作業員への注意喚起目的で感電の警告ラベルを貼るのは、超BAD です!その前に色々考慮(対策)すべきことがあります!

4.2 項 装置の選択

4.2 項 装置の選択でだいじなところ
  • 採用できる電気部品は3つの条件(意図する用途・IEC に適合・指示に従う)がある
  • CDF (Constructional Data File) の作成をおすすめ
  • 関連するIEC 規格がない場合は、UL, CSA, VDE 適合品でも良いときがある

重要度
エンカウント
対策の難しさ
コメント rank C  採用する電気部品は最初からCE マーク付きを購入しよう。CDF をしっかり作ろう。部品の選択を間違えると最初から致命的。知らず知らずにヤバいことしていませんか?
  • 制御用の電線をPE 用の電線として使っている
  • スイッチング電源の基板を自作して、そのまま使用
  • それぞれのサーボドライバーの一次側に設置すべき過電流保護器(ブレーカー)を省略している

4.2項 装置の選択

4.2 装置の選択

4.2.1 一般

機械の電気装置に用いる電気部品及び電気機器は,次の全てを満足しなければならない。 − 意図する用途に適している。

− 関連する日本工業規格又はIEC規格がある場合は,それらに適合する。

− 供給者の使用上の指示に従って用いる。

出典 JIS B 9960-1:2019

原本の英語では、下記のように書かれています。

4.2 Selection of equipment

4.2.1 General

Electrical components and devices shall:

– be suitable for their intended use; and

– conform to relevant IEC standards where such exist; and

– be applied in accordance with the supplier’s instructions.

出典 IEC 60204-1 | Edition 6.0 2016-10 | INTERNATIONAL
STANDARD | Safety of machinery – Electrical equipment of machines –
Part 1: General requirements | 4 General requirements | 4.1 General | page 27 | urn:isbn:978-2-8322-3621-5

中の人
中の人
規格の意味を考える時は、英語に戻ったほうが良いですよ

shall の意味

ここで重要なのは”shall” という単語があります。

日本語で置き換えると、この単語を翻訳しにくいのですが、意味合いとして

“shall” は「絶対やれ!」と強い義務と強制力をもっている意味の助動詞です。

ジュンイチロウ
ジュンイチロウ
機械の電気装置に用いる電気部品や電気機器は、次のことを、絶対にマジで満足しとけ!

conform to の意味

英語版では第二文目に “conform to…” と記述しています。

一方JIS 版では”conform to” に該当するところは「それらに適合する」と記述されています。

規格では “conform” という単語は”shall” と同じくらい気を付けるべき重要なキーワードです。

規格では「適合する」を意味する単語として、”conform”, “meet”, “satisfy”, “comply”, “fit” などをよく使います。

この中で”conform” とはナンバーワンくらいの勢いのある「適合」という意味です。

第二文の “Electrical components and devices shall conform to relevant IEC standards where such exist” の意味は「電気部品と電気機器は、適切なIEC 規格がある場合は、強制力を持ちつつ、かつ、適合しなければならない」ということになります。

ジュンイチロウ
ジュンイチロウ
機械の電気装置に用いる電気部品や電気機器は、次のことを絶対にマジでオニ適合しとけ!! しとかんかったら、そら恐ろしいことになるで!!

意図する用途

意図する用途に適している

悪い見本。PE に接続するケーブルに赤色を使った写真悪い見本。PE に接続するケーブルに赤色を使った写真

例 「制御用の電線をPE 用の電線として使っている」 

PE は緑と黄色の組み合わせの電線ですが、それにはちゃんとPE 専用の電線という、誰が見てもすぐ分かるような意図があります。

この場合、PE に使用する電線が「赤色」ということで、意図する使用、目的、用途を逸脱する使用なので「不適合」です。

IEC 60204-1 13.2.4 項では、赤色の電線は交流制御回路に用いられるように推奨されています。

IEC 規格に適合

関連するIEC 規格がある場合は、それらに適合する

実務で考えると、設計者が採用すべき部品は、以下のような安全性を証明する書類を持っている部品であれば良いです。

  • CoC (Certification of Conformity: 認証書)
  • DoC (Declaration of Conformity: 自己宣言書)
  • CB report
  • Test report

書類はごちゃごちゃになりやすいのもあり、これらの証明する書類を一箇所にまとめて、表(CDF) にしてまとめておくことを強くおすすめします。

CDF (Constructional Data File)

CDF (Constructional Data File) とは、別名「重要部品リスト」と呼び、機械に使っている部品それぞれが安全性を証明する書類を持っているということをリスト化した書類です。

中の人
中の人
実務ではIEC でなくても、EN, ISO, VDE に適合でもいい場合が多いですし、場合によってはUL, CSA に適合でもいい場合があります。

特に注意すべきは、第三者認証機関などでの審査では、安全を目的とした部品や、安全を目的とした機能が組み込まれている部品は上記の書類を準備していないと、一発で不適合と言われます。

CDF に記載すべき部品

CDF に記載すべき部品として以下の部品が対象です。(他にもあります)

CDF に記載すべき部品の例

  • 絶縁トランス
  • モーター
  • レーカー、サーキットプロテクター
  • サーボドライバー、インバータードライバー
  • SRP/CS に用いる部品(例、安全スイッチ、安全コントローラー、安全リレー、非常停止ボタン)
  • 電線

番外編で、IEC 規格にない場合などは、UL や VDE などの規格を用います。

UL を用いる場合

  • 電線 (AWM: UL 1061, MTW: UL 1015)
  • プラスチックの難燃性を証明する書類 (UL 94)

VDE を用いる場合

  • 強制ガイドリレー (VDE 0435)
使いやすい部品や装置を何でもかんでも自由に選択はできません
ジュンイチロウ
ジュンイチロウ
世の中に適切なスイッチング電源がなかったので、基板を自作したぜwww

という場合はどうなるかというと、そのままは使えません。

スイッチング回路に関連するIEC 規格がいっぱいあるので、用途に応じて下記のような規格のどれかにに”shall conform” することが求められます。

  • IEC 61010-1 測定用、制御用及び試験室用電気機器の安全性 − 第1部:一般要求事項
  • IEC 61800-5-1 可変速駆動システム(PDS)− 第5-1部: 安全要求事項−電気的、熱的及びエネルギー
  • IEC 62368-1 オーディオ・ビデオ、情報及び通信技術機器 − 第1部:安全性要求事項
中の人
中の人
認証書や自己宣言書が、どうしても入手が難しいという場合は、ちゃんと試験」して”test report” を作って、IEC の規格に適合している証明します。

ただし、「ちゃんと試験する」ということがかなり難しいので、テストプランを第三者認証機関に作ってもらい、その通りに試験することをおすすめします

CDF の作成

CDF はを作る目的は、使用される部品が安全の要求を満たしていることを証拠付けるためのものです。

規格の要求で作成しろということが決められている訳ではありません。しかし、リスクアセスメント時や審査時においてはとても重要な書類です。

CDF の書き方に決まりはないですが下記の表に倣いましょう。

CDF (Constructional Data File )の例
Object /
Part No.
Manufacturer  Type /
Model
Technical
data
Standard Mark of conformity
ここは図面指示の番号など メーカー名など  型式など  安全のデーター  CoC や DoC に記載されている規格番号  認証機関と認証書番号
14A/Breaker/NFB1 Fuji Electric BW50R 30A, OVC: III, SCCR:15kA EN 60947-2:2006+A1
IEC 60947-2:2009
UL 489
TUV R: R50241624
UL file no.: E90584
20C/Emergency stop button/ESB1 Fuji Electric AR22V0L B10d=200,000 EN 60947-5-1:2004+A1:2009
EN 60947-5-5:1997+A1:2005+A11:2013
TUV R: R50028146

Technical Data は安全のためのデーターを記入します。

一般回路に用いる部品 例

  • 定格電圧や電流
  • 定格短絡電流 SCCR (Short Circuit Current Rating)
  • 過電圧カテゴリー OVC (Over Voltage Category)
  • 保護等級 Protection Class
  • IP等級

安全関連回路(SRP/CS) に用いる部品 例

  • B10d, B10, MTTFd, DCavg
  • PFHd, PL

安全関連回路(SRP/CS) に使える部品はこちらの記事を参照してください。

 

安全回路設計入門者を悩ます平均危険側故障時間 MTTFd の計算方法。具体的なB10dやnopを用いながらMTTFdの求め方と分類方法を解説します。安全回路設計がPL計算するときに、必ず出会うMTTFd。部品単位(SRP)のMTTFd の算出方法はISO 13849-1 の中でも基本中の基本。危険側故障と安全側故障の概念と、計算方法の定量的手法が混ざる要求なので、非常にとっつきにくい項目です。この記事は現役リスクアセスメントエンジニアが安全回路初心者に向けて、具体的な例を用いながらMTTFd を解説します。...

 

 

【ISO13849-1カテゴリーの説明を具体的な例を用いてわかりやすく解説します】WellTried十分吟味された部品やカテゴリーを構成するSRP/CSとアーキテクチャーについてこの記事ではパフォーマンスレベル PL を求める方法についてPL を構成する一つの要素である「カテゴリー」の解説を具体的な例を用いながら"Well-Tried" 十分吟味された部品やカテゴリーを構成するアーキテクチャーについて現役のリスクアセスメントエンジニアがわかりやすく説明しています。...

 

使用上の指示

供給者の使用上の指示に従って用いる

使用する部品はメーカーが提供しているマニュアルに従います。

マニュアルに従っていない使い方は、不適合となります。

4.3 項 電源

4.3 項 電源 だいじなところ
  • 電源仕様や各種定格値はオペレーションマニュアルへ下記例のように書くこと

重要度
出現率
対策の難しさ
コメント rank D 4.3 項はマニュアル製作時に参考にするだけでじゅうぶん

4.3.1 項 一般

4.3 電源

4.3.1 一般

電気装置は,次のいずれかの電源条件で,正しく作動するように設計しなければならない。

− 4.3.2又は4.3.3に規定する電源

− 使用者が指定する電源

− 供給者が指定する特殊な種類の電源(4.3.4を参照)

出典 JIS B 9960-1:2019

ほとんどの機械は交流動作が多いので、この記事では4.3.2 交流電源に絞って説明します

4.3.2 項 交流電源

4.3.2 交流電源

電圧 定常時の電圧が公称電圧の0.9〜1.1倍

周波数 公称電源周波数の0.99〜1.01倍(連続)又は0.98〜1.02倍(短時間)

高調波 高調波ひずみ(含有率)は,第2高調波から第30高調波までの合計が充電導体間の総電圧実効値の12 %以下

電圧不平衡 三相電源の逆相分の電圧及び零相分の電圧は,いずれも正相分の2 %以下 瞬時停電 電源の中断又は無電圧状態は,供給電源のサイクルのどの時点でも3 ms以下で,次の中断までの間隔は1秒を超える。

電圧降下 降下量は電源の実効値の20 %以下で,降下持続時間は1サイクルの長さを超えず,次の電圧降下までの間隔は1秒を超える。

出典 JIS B 9960-1:2019

ここで大事なのは、マニュアルに電源定格を記述する際に道しるべとなります。下記の表を参考にして下さい。

CE対策の場合はこの4.2.1 項の通りに記述するのが良いでしょう。
電気的な定格値をマニュアルに記述する例
Item Specification (Rating)
Power requirement Power source voltage 200 Va.c. ± 10%, 3-Phase + PE
Protection class
(IEC 62368-1)
I (PE connected)
Voltage drop Within 15% of normal voltage for 0.5s or less
Frequency 50 Hz
Cut off current  75 A
Short-circuit current rating (SCCR) 1 kA
Momentary power failure Less than 10 ms
Voltage impulse Peak value 200 % or less of effective value (rms value) of line voltage with pulse duration 1.5 ms
Waveform distortion AC voltage  7 % or less
Imbalance in line voltage 5 % or less, or within 10 V
IP code Enclosure outside IP4X
Enclosure inside IP2X
Physical environment Pollution degree 2
Overvoltage category III
Pneumatic pressure 0.6 – 0.9 Mpa, 220 NL

4.4 項 物理的環境・運転条件

4.4 項 物理的環境・運転条件 でだいじなところ
  • EMC 試験は必須です
  • 通常の電気部品の認証条件は海抜2000m です。それ以上の高度は特別な部品が必要です。

重要度
エンカウント
対策の難しさ
コメント rank D EMC 試験はしっかり実施しよう。他の要求はマニュアル製作時に参考にしよう。

4.4.1 項 一般

4.4 物理的環境及び運転条件

4.4.1 一般

電気装置は,運転を意図する場所の物理的環境及び運転条件に適していなければならない。

出典 JIS B 9960-1:2019

電気装置は、場所の物理的環境及び運転条件に適合するのみならず、使用目的・使用環境 によって、柔軟に部品選定(4.2.1 項 装置の選択一般)が必要です。

4.4.2 項 電磁両立性(EMC)

4.4.2 電磁両立性(EMC)

電気装置は,その意図する運転環境において適正とされるレベルを超える電磁妨害を発生してはならない。さらに,意図する運転環境において正しく機能するように,電磁妨害に対する十分なイミュニティをもたなければならない。

次の全ての条件が満たされていない場合,電気装置にはイミュニティ及び/又はエミッション試験を行う。

− 組み込まれた機器及び構成品は,関連する製品規格(又は,製品規格がない場合は包括的規格)に規定されている意図するEMC環境のEMC要求事項を満たす。

− 電気設備及び配線は,相互作用(例えば,配線,遮蔽,接地)に関して,機器及び構成品に関する供給者の指示に,又はそうした指示が供給者から得られない場合は,参考用の附属書Hに従う。

注記 包括的なEMC規格JIS C 61000-6-1又はJIS C 61000-6-2,及びIEC 61000-6-3又はIEC 61000-6-4は,EMCのイミュニティ及びエミッションの一般的な限度値を規定している。

出典 JIS B 9960-1:2019

EMC 指令との関係

電磁両立性の検証のために、EMC指令 2014/30/EU という指令があります。

EMC指令の整合規格として下記規格を用いてEMC 試験を実施します。

  • IEC 61000-6-1 電磁両立性−第6-1部:共通規格−住宅、商業及び軽工業環境におけるイミュニティ規格
  •  IEC 61000-6-2 電磁両立性−第6-2部:共通規格− 工業環境におけるイミュニティ規格
  •  IEC 61000-6-3 電磁両立性(EMC)-第6-3部:一般規格-住宅環境における機器のエミッション規格
  •  IEC 61000-6-4 電磁両立性(EMC)-第6-4部:一般規格-工業環境のエミッション規格
産業機械へのEMC 試験は IEC 61000-6-2, IEC 61000-6-4 を用いることが多いです
ジュンイチロウ
ジュンイチロウ
EMC 試験は必要でしょうか?以前からEMC 試験を実施せずに出荷していましたので、必要ないような気がします
中の人
中の人
EMC 試験は旧EMC 指令2004/108/EC では機械の電気設備について、機械が固定設備の場合はグッドエンジニアリングプラクティス(GEP) を用いて、実施回避ができました。

新しいEMC 指令2014/30/EU では固定設備の要件が明確化され、実施回避が難しくなっています。

EMC 試験は実施しておいた方がいいでしょう。

機械指令との関係

機械指令 2006/42/EC 付属書1、1.5.11項に下記の要求があります。

1.5.11 外部放射(External radiation)
機械類は、外部放射が機械の運転を妨げないように設計・製造されなければならない。

出典 国際安全衛生センター|資料|EU機械指令付属書 I|機械類の設計と製造に関する必須健康安全要求事項|仮訳

この要求は「機械の電磁両立性の一つの側面で、人の健康、および、安全に影響をおよぼす 可能性のある外部ソースからの電磁放射による妨害に対する機械の耐性を扱うものである」と説明されています。

つまり・・・

EMC 指令からも、機械指令からも電磁両立性(EMC) についてちゃんと検証し設計しなさいとあるので、これらのことからEMC 試験が必要と考えることができます。

4.4.5 項 高度

機械の使用できる高度について、電気回路設計者は使用部品について考える必要があります。

4.4.5 高度

電気装置は,海抜1 000 mまでの高度で正常に作動しなければならない。 装置を高度の高い場所で使用する装置については,次の全ての低下を考慮に入れる必要がある。

− 耐電圧

− 機器の開閉性能

− 空冷効果 係数が製品データに規定されていない場合に使用する補正係数に関して,製造業者に相談することを推奨する。

出典 JIS B 9960-1:2019

IEC 規格に適合している電気部品(4.2.1 項参照)については第三者認証機関が一般的に海抜2000m で認証しています。

機械の設置環境が海抜2000m を超える場合は空気の密度と気圧が低くなるので、空間における絶縁距離(空間距離)がもっと長くなります。

設計者は例えばインバーター、サーボドライバー、スイッチング電源などの電気部品を海抜2000 m を超えて使用するときには、今までの電気部品が使えないかもしれません。

ここまで読んでくださいまして、ありがとうございました。

次回は「5章 5.1 項 5.2 項 入力電源導体の接続 断路器及び開路用機器」の解説にすすみます。

 

【IEC60204-1の5.1項5.2項をわかりやすく解説】入力電源導体はブレーカーに直接接続すべき?PEマークが端子台に無いと不適合?電気回路設計者が入力電源導体や外部保護導体について守るべき要求電気制御盤の外から入ってくる入力電源導体と外部保護導体についてはいくつかの要求が5.1項と5.2項に記述されています。この記事は電気設計初心者が初めてIEC 60204-1 の要求に基づいて安全な電気回路を設計するために役立つ記事を現役リスクアセスメントエンジニアが解説します。 ...

 

規格は最新のものを参考にすべきですが、IEC 60204-1:2016 版の参照はJIS ハンドブックの年度が古くても使えます。

 

ABOUT ME
ジュンイチロウ
現役のリスクアセスメントエンジニア。 現在はドイツの安全部品メーカーで機械安全コンサルタントをしています。第三者認証機関で審査官の経験、機械安全トレーニング、セミナー講師の経験から、リスクアセスメント、CE 対策、NRTL 対策を解説します。 Certified Machinery Safety Experts, CMSE, TUVNORD