解説 IEC 60204-1

【IEC60204-1の5.1項5.2項をわかりやすく解説】入力電源導体はブレーカーに直接接続すべき?PEマークが端子台に無いと不適合?電気回路設計者が入力電源導体や外部保護導体について守るべき要求

5.1 項 入力電源導体の接続

入力電源が2系統の(主電源とバックアップ電源)実際の電気制御盤の写真入力電源が2系統の(主電源とバックアップ電源)実際の電気制御盤の写真
5.1 項のだいじなところ
  • 制御盤の外から入ってくる入力電源導体は直接ブレーカーの一次側につなぐ
  • いろいろな電圧の種類を使う場合はトランスを用いて変換する
  • 入力電源用の端子について、導体を示す L1, L2, L3, N, PE の表記をつかう
重要度
エンカウント
対策の難しさ
コメント rank C 5 章全般に言えることですが、見た目で判断できる対策の要求なので審査官が指摘しやすい、安全設計初心者が指摘されやすい章です。安全設計初心者にとって5.1 項は要求を読みながら対策できるので比較的やさしい内容となっています。

5 入力電源導体の接続,断路器及び開路用機器

5.1 入力電源導体の接続

機械の電気装置は,可能な限り単一の電源に接続することが望ましい。入力電源と異なる電源を装置の特定部分(例えば,入力電源電圧と異なる電圧とで作動する電子機器)に用いる必要がある場合には,この電源は,可能な限り機械の電気装置を構成する機器(例えば,変圧器,変換器)から供給することが望ましい。大形の複合機械類に対しては,現場の電源設備配置によっては,複数の入力電源から供給する必要性があり得る(5.3.1参照)。

出典 JIS B 9960-1:2019

リスクアセスメント担当者や電気回路計者は正確を期すために規格書を参考にします。

IEC 60204-1:2016 英語版を持つべきですが、専門的な英語が並んでいるので、英語が苦手な方は難しいかもしれません。

そのためには、重要な規格が網羅され、すでに日本語に翻訳されているJIS ハンドブック 72 機械安全(2022) [ 日本規格協会 ] が必携です。

JIS ハンドブック 72 機械安全JIS ハンドブック 72 機械安全

 

入力電源導体は単一の電源に接続することが望ましい

機械の電気制御盤に接続する入力電源導体(いわゆる入力電線とか動力電線と呼ばれる電線など)は、できるだけ1系統にします。

同一の電気制御盤内に異なる電源電圧回路が存在する時(例、交流200V / 100V, 直流24V, 5V など)は、トランスやスイッチング電源を用いて電圧を変換します。

同一の電気制御盤に複数の電源を入力する場合は、UPS バックアップ電源の系統を別にしたりするときが該当します。

機械の電気制御盤が複数あるときは、電気制御盤毎に複数電源入力が必要になるかもしれません。

下記ブロック図例を参考にしてください。

複数の電源を入力する場合は、電源遮断器 (Supply disconnecting device) も電源系統毎に必要です

同一の電気制御盤内に異なる電源電圧回路が存在する時(例 交流200V / 100V, 直流24V, 5V ) の対策の例

典型的な電気回路の電源系統(部品構成)典型的な電気回路の電源系統(部品構成)

 

入力電源導体はブレーカーに直接接続すべき?
入力電源導体を電源断路器に直接接続する要求

メインブレーカーに外部導体を直接接続し、かつ、PE端子台が近傍にあり、適切なマーキングがとられている写真メインブレーカーに外部導体を直接接続し、かつ、PE端子台が近傍にあり、適切なマーキングがとられている写真

5.1 入力電源導体の接続

入力電源導体の接続においては,プラグ接続[5.3.2 e)参照]による場合を除き,電源導体を電源断路器に直接接続することが望ましい。

出典 JIS B 9960-1:2019

中の人
中の人
JIS では”Supply disconnecting device” を「電源断路器」と訳しています

IEC では入力電源導体の接続について下記のように記述しています。

5.1 Incoming supply conductor terminations

Unless a plug is provided with the machine for the connection to the supply (see 5.3.2 e)), it is recommended that the supply conductors are terminated at the supply disconnecting device.

引用 IEC 60204-1 Edition 6.0 2016-1 | INTERNATIONAL
STANDARD Safety of machinery – Electrical equipment of machines –
Part 1: General requirements | 5 Incoming supply conductor terminations and devices for disconnecting and switching off | 5.1 Incoming supply conductor terminations | page 30 |urn:isbn:978-2-8322-3621-5

 

つまり、これをわかり易く訳してみると・・・

ジュンイチロウ
ジュンイチロウ
電気制御盤に入ってくる主電源は、できるだけ、直接メインブレーカー一次側端子台に接続しましょう

主電源の入力は、いったん端子台に受けて、そこからメインブレーカーに配線することは、よほどの理由がない限りはNG(不適合) です。

外から入ってくる入力電源を直接ブレーカーに接続せずに、端子台に接続している例の写真外から入ってくる入力電源を直接ブレーカーに接続せずに、端子台に接続している例
ジュンイチロウ
ジュンイチロウ
上の写真の例では、やろうと思えば、メインブレーカーに入力電源を直結できるということですね!

中性線 N の表示や中性線の接続について

5.1 入力電源導体の接続

中性線を用いる場合には,そのことを機械の技術文書,例えば,据付図,回路図に明記し,16.1に従ってNの表示ラベルを付けた絶縁端子を中性線専用に設けなければならない。中性線端子を電源断路器の一部として用いてもよい。

電気装置の内部で中性線と保護ボンディング回路との間を接続してはならない。

例外 TN-C電源供給系統においては,電気装置とTN-C電源供給系統との接続点で,中性線端子とPE端子とを接続してもよい。

出典 JIS B 9960-1:2019

IEC 60445 より中性線は下記の表記が必要です

  • 導体 N
  • 端子台 N
  • 色 青
  • グラフィックシンボル なし
中の人
中の人
TN システムの場合、中性点 N を電源断路器(Supply disconnecting device)に接続して、断路しても、断路しなくても、どっちでもいいです

「電気装置の内部で中性線と保護ボンディング回路との間を接続してはならない。」とは

「機械本体の中でPE と中性点 N を接続するのではなくて、電気制御盤の内部で接続しなさい」という意味です。

並列電源についての入力電源導体の接続

5.1 入力電源導体の接続

並列電源を使用する機械の場合は,多重電源系統を対象とするJIS C 60364-1の要求事項が適用される。

出典 JIS B 9960-1:2019

複数の電源を持つTN システムの一部を構成する設備の設計が不適切な場合、動作電流の一部が意図しない経路を流れる可能性があります。

動作電流の一部が意図しない経路を流れる電流は以下の危険源です

  • 火災
  • 腐食
  • 電磁妨害を引き起こす可能性

このためには下記対策が必要です。

  • a) 変圧器の中性点、または、発電機のスターポイントのいずれかからアースへの直接接続はしない
  • b)  変圧器の中性点、または、発電機のスターポイントの間の相互に連結する導体は、絶縁されていなければならない。この導体の機能はPEN のようなものであるが、電流を使用する機器に接続してはならない。
  • c)  相互に接続された電源の中性点とPEとの間の接続は、1つだけ設けるものとする。この接続は、主開閉器アセンブリの内部に設置する。
  • d)  PE の追加接地をおこなう

線導体間に単相電源の負荷、または、三相負荷だけがある工場では、中性線を設ける必要はありません。この場合、PE 導体をアースに複数接地することを推奨します。

入力電源導体の識別

適切な端子台のマーキング (L1, L2, L3, PE マーク, N ) の写真適切な端子台のマーキング (L1, L2, L3, PE マーク, N ) の写真

5.1 入力電源導体の接続

入力電源接続用の端子は,JIS C 0445又はIEC 60445に従って明確に識別しなければならない。外部保護導体用の端子は,5.2に従って識別しなければならない。

出典 JIS B 9960-1:2019

入力電源導体(制御盤の外から入ってくる導体)の端子台の識別については

IEC 60445:2021 (文字数字の表記に関する 一般則を含む機器の端子及び 識別指定された電線端末の識別法)の要求に従います。

IEC 60445 は JIS C 0445 に整合されて日本語に対訳されています。(JIS は古いので現行と比べて違うところがあります。)

入力電源用の端子については

導体を示す”L1, L2, L3, N, PE” の表記を使います

識別のために文字や数字を使用する場合、文字は大文字のラテン文字のみとし、数字はアラビア数字とします。

中の人
中の人
保護導体の表記はPE です。
時々”E, G, GND” と表記している場合があります。IEC 60204-1 においては、この表示方法は間違いです

5.2 項 外部保護導体の接続用端子

5.2 項のだいじなところ
  • 制御盤の外から入ってくる保護導体 PE には、ブレーカー近傍に端子台を設けること
  • PE 端子台にはPE のラベルかマーキングをすること
  • PE の太さは計算式を用いて算出すること

重要度
エンカウント
対策の難しさ
コメント Rank C 高い確率で審査官はアースの処理(色・かたち・方法)について指摘します。アースの処理の対応は比較的やさしいので、規格の内容を読めばわかる程度にしておこう。

各入力電源の接続について

メインブレーカー近傍にPE 端子台 (PE ターミナル) の例の写真メインブレーカー近傍にPE 端子台 (PE ターミナル) の例の写真

5.2 外部保護導体の接続用端子

各入力電源について,その給電線用端子と同一の区画(近傍)に,機械を外部保護導体に接続するための端子を設けなければならない。

出典 JIS B 9960-1:2019

メインブレーカー(電源断路器, Supply disconnecting device)の近くに外部から入ってくる保護導体 PE の端子台を設置します。

保護導体 PE の太さ

5.2 外部保護導体の接続用端子

端子サイズは,その給電線のサイズに応じて決められた表1に規定する断面積をもつ外部の銅保護導体を接続できなければならない。

銅以外の外部保護接地導体を用いる場合には,その接地導体に適する寸法及び種類の端子を選ばなければならない。

出典 JIS B 9960-1:2019

外部から入ってくる保護導体 PE の太さについての規定です。下記テーブル参照。

例えば、入力電源のケーブルの太さが12 mm2 だとすると

外部から入ってくる保護導体 PE の太さは S = 12 ≦ 16 mm2 となり、 12 mm2 です。

銅の保護導体(PE 電線) の最小断面積
相導体 S の断面積 mm2 対応する保護導体 PE の最小断面積 mm2
S ≦ 16 S
16 < S ≦ 35 16
S > 35 S/2

まれに、銅以外の材質、例えばアルミニウムの導体が保護導体 PE に使われているかもしれません。

その時は、上記テーブルの算出方法が使えませんので、メーカーの指示に従います。

PEマークが端子台に無いと不適合?
外部保護導体 PE 端子の識別の要求

メインブレーカー近傍のPE端子台とPEマークの写真メインブレーカー近傍のPE端子台とPEマークの写真

5.2 外部保護導体の接続用端子

(中略)

各電源入力点では,外部保護導体用の端子を文字PEのマーク又はラベルで識別表示しなければならない(JIS C 0445又はIEC 60445を参照)。

出典 JIS B 9960-1:2019

外部から入ってくる保護導体 PEが接続されるところには下記の対策が必要です。

保護導体のマーキングとラベルの対策
保護導体のマーキングの要求 ラベル対策
PE の文字のマーク PE
ラベル
PE マークPE マーク

ラベルやシールの耐久性

ラベルやシールなどには耐久性が求められます。

例えば、下記IEC 61010-1 (測定用、制御用及び試験室用電気機器の安全性 − 第1部:一般要求事項)  5.3 項に表示(マーキング)の耐久性についての要求があります

5.3 表示の耐久性

この規格に規定する表示は,正常な使用状態の下で明瞭で読みやすい状態を維持し,かつ,製造業者が指定する清掃用薬剤の影響に耐えなければならない。

適合性は,機器の外側にある表示の耐久性に対して,次の試験を行うことによって確認する。製造業者が指定する清掃用薬剤(又は指定されていない場合は,70 %のイソプロピルアルコール)を浸した布で30秒間,過度の圧力を加えずに表示を手でこする。

上記の処理後でも,表示は明瞭で読みやすく,かつ,粘着性のラベルが剝がれかかったり,縁がめくれたりしてはならない。

出典 JIS C 1010-1:2019

ジュンイチロウ
ジュンイチロウ
テプラなどでPE マークなど自作してもいいのでしょうか?
中の人
中の人
保護導体 PE や警告ラベル(カミナリマーク・温泉マーク)などを安易にテプラなどで自作するのはおすすめできません

ここまでお読みくださいまして、ありがとうございます。

次回の記事はIEC 60204-1 5.3項 電源断路器 (Supply disconnecting device) の解説に進みます。

間違いやすい保護導体(PE) の配線方法については下記の記事を参照ください。

 

IEC60204-1の要求に適合するオペレーターを間接接触による感電事故から防ぐための保護導体(PE)の正しい故障保護と間違った配線方法を具体例から学んでみよう!IEC60204-1の要求に適合するオペレーターを間接接触による感電事故から防ぐための保護導体(PE)の正しい故障保護と間違った配線方法を具体例から学んでみよう!...

 

規格は最新のものを参考にすべきですが、IEC 60204-1:2016 版の参照はJIS ハンドブックの年度が古くても使えます。

ABOUT ME
ジュンイチロウ
現役のリスクアセスメントエンジニア。 現在はドイツの安全部品メーカーで機械安全コンサルタントをしています。第三者認証機関で審査官の経験、機械安全トレーニング、セミナー講師の経験から、リスクアセスメント、CE 対策、NRTL 対策を解説します。 Certified Machinery Safety Experts, CMSE, TUVNORD