解説 IEC 60204-1

IEC60204-1の要求に適合するオペレーターを間接接触による感電事故から防ぐための保護導体(PE)の正しい故障保護と間違った配線方法を具体例から学んでみよう!

PE や保護導体(protective conductor) の目的

PE や保護導体の目的を理解する上でだいじなところ
  • IEC 60204-1 では感電からの保護を規定しています
  • PE も保護導体も同じ意味で安全を目的にしています
  • 間接接触による感電からの保護(間接保護)に役立ちます

重要度
エンカウント
対策の難しさ
コメント rank D PE や保護導体を甘く考えてはいけません。なぜ重要なのか原理を知っておこう。

PE とは

PE とは何を意味するのか?? なんだか漠然としています。

定義があるので見てみましょう。

PE (protective earth) とは

感電防止など、安全のために設けられた導体

注記 電気設備では、PE と識別される導体は、通常、保護接地導体 (protective earthing conductor) としても考慮される

出典 IEC 60050 Electropedia: The World’s Online Electrotechnical Vocabulary

PE は故障時の感電防止のために外部導体に接続するための端子、または、保護接地(アース)電極の端子を識別することを目的としています。

保護導体(protective conductor) とは

IEC 60204-1:2016 では保護導体(protective conductor)が定義されています。

3.1.51 保護導体(protective conductor)

電気装置の露出導電性部分から保護接地(PE)端子への一次故障電流経路となる導体。

出典 JIS B 9960-1:2019

PE も保護導体(protective conductor)もほぼ同じ意味でオペレーターを感電事故から保護する意図をもった、安全を目的とした導体を意味しています。

中の人
中の人
一つ前の版IEC 60204-1:1999+A1:2006 では保護導体 (protective conductor)を下記のように定義していました。

感電保護のために、次の部分を電気的に接続する保護ボンディング用導体
– 露出導電性部分
– 外部導電性部分
– 主接地端子 (PE)

リスクアセスメント担当者や電気設計者は正確を期すために規格書を参考にします。

IEC 60204-1:2016 英語版を持つべきですが、専門的な英語が並んでいるので、英語が苦手な方は難しいかもしれません。

そのためには、重要な規格が網羅され、すでに日本語に翻訳されているJIS ハンドブック 72 機械安全(2022) [ 日本規格協会 ] が必携です。

JIS ハンドブック 72 機械安全JIS ハンドブック 72 機械安全

 

感電からの保護とは?

直接接触と間接接触

感電っていったい何?? よく考えてみるとこれまた漠然としています。

感電の分類は2種類があります。

  • 直接接触による感電
  • 間接接触による感電

直接接触と間接接触については、それぞれ定義があるので見てみましょう。

3.1.15  直接接触(direct contact)

人又は家畜と充電部との接触。

3.1.34 間接接触(indirect contact)

絶縁故障によって充電状態となった露出導電性部分に人又は家畜が触れること。

出典 JIS B 9960-1:2019

ジュンイチロウ
ジュンイチロウ
200V の配線の端子に直接触ってビリビリくることを直接接触、電気制御盤のパネルを触ってビリビリくることを間接接触と言うんですね!
まさに洗濯機の外側に触ってビリビリしていることを言うんですね!

いずれにせよ感電を引き起こす電気的危険源からオペレーターを保護しなければならないので、直接接触・間接接触からの保護を次のように呼んでいます。

  • 直接接触による感電からの保護のことを基本保護
  • 間接接触による感電からの保護のことを故障保護

基本保護と故障保護には定義があるので見てみましょう。

3.1.4

基本保護(basic protection)

障害(絶縁故障)のない状態における感電からの保護。

3.1.31

故障保護(fault protection)

単一故障状態における感電からの保護。

出典 JIS B 9960-1:2019

ジュンイチロウ
ジュンイチロウ
だんだん難しくなってきました (T_T)

直接接触に対する保護(基本保護)

直接接触に対する保護(基本保護)の例はIP2X 端子などが該当します。

IP2X はフィンガープロテクション、または、指保護と呼ばれ、IP2X の端子カバーは危険な充電部をもつ端子台に使います。

フィンガープロテクションとは文字通り指が危険な充電部(危険源)に到達できないようにする目的をもった物理的な保護方法です。

IEC 60204-1 に適合した外部からの保護導体(protective conductor) の接続、かつ、危険電圧の充電部にIP2X (フィンガープロテクション)の保護をメインブレーカーへ取り付けIEC 60204-1 に適合した外部からの保護導体(protective conductor) の接続、かつ、危険電圧の充電部にIP2X (フィンガープロテクション)の保護をメインブレーカーへ取り付け

 

中の人
中の人
上の写真は幾つかおさえておくポイントがあります
・ 外部から入ってくる保護導体の端子台
・ 危険な充電部に対するIP2X のカバー
ジュンイチロウ
ジュンイチロウ
なるほど!
感電する危険源に指が入れないようにするのですね!

 

【IEC60204-1の5.1項5.2項をわかりやすく解説】入力電源導体はブレーカーに直接接続すべき?PEマークが端子台に無いと不適合?電気回路設計者が入力電源導体や外部保護導体について守るべき要求電気制御盤の外から入ってくる入力電源導体と外部保護導体についてはいくつかの要求が5.1項と5.2項に記述されています。この記事は電気設計初心者が初めてIEC 60204-1 の要求に基づいて安全な電気回路を設計するために役立つ記事を現役リスクアセスメントエンジニアが解説します。 ...

 

IP とは

IP とはIEC 60529:1989+A2:2013 に定義されていて、JISでは JIS C 0920:2003 で整合化されています。

IP とは”Ingress Protection” の略で日本語でいうと「進入に対する保護」みたいな感じになって、ここでは外部からやってくるモノに対しての保護という意味です。

IP は保護等級というエンクロージャーよる、危険な箇所への接近・外来固形物の侵入・水の浸入に対する保護の度合をコードで表します。

このコードをIP code と呼びます。

IP2X とは

IP code は複数の数字や英字で組み合わせて表します。

これを特性数字と呼びます。

IP 以下から順番に最初の第一特性数字は物理的なモノが進入してくるイメージの保護です。

第一特性数字が”2″ の場合は下記を意味します。

第一特性数字 ”2″

  • 指での危険な箇所への接近に対して保護
  • 直径12 mm 長さ80 mm の関節付きテストフィンガーの先端と危険な箇所との間に適正な空間距離を確保している

第二特性文字は水の進入に対する保護を表します。

第二特性数字が”X” の場合は下記を意味します。

第二特性数字 ”X”

  • 電気機器に”特性数字”を規定する必要がない場合、その非適用特性数字は、アルファベットの”X” に置き換えて示す

一方、間接接触に対する保護(故障保護)はPE など保護導体が該当します。

間接接触に対する保護 故障保護

なぜPE や保護導体が重要なのか?

その目的の一つとして、オペレーターの間接接触による感電(故障保護)からの保護を目的としています。

中の人
中の人
保護導体は漏洩電流対策、EMC (電磁両立性)対策、そして静電気対策などにも有効な手段です

電気回路がTN 系統でCLASS I 、かつ、PELV (保護特別低電圧)システムを用いている場合、絶縁トランスやスイッチング電源など、部品の内部に絶縁システムがあるものは大地に接地されています。

TN系統とは

TN-S系統: 系統の全体にわたって個別の中性線や保護導体をもつTN-S系統: 系統の全体にわたって個別の中性線や保護導体をもつ

TN系統はとは電源において1点を直接接地し、設備の露出した導電性部分を保護導体によってその点へ接続することを意味します。

TN系統の文字の意味は、1文字目は電力系統と大地との関係を、2文字目は設備の露出した導電性部分と大地との関係を意味します。

それぞれの詳しい意味は下記に記します。

1文字目 ”T” は1点を大地に直接接続する

2文字目 ”N” は露出した導電性部分を電力系統の接地点(交流系統において電力系統の接地点は通常では 中性点、または、中性点がない場合は一つの線導体)へ直接接続する。

単一故障からの保護

機械や電気の安全の考え方として、単一故障からの保護という原則があります。

単一故障に対する対策をとられた部品やシステムには二重絶縁や強化絶縁などの絶縁システムがそなわっています。

二重絶縁や強化絶縁を下記の図で考えます。

絶縁システム 感電に対する保護手段として許容する組合せ絶縁システム 感電に対する保護手段として許容する組合せ

 

特に二重絶縁は「一つの保護方策」 + 「一つの保護方策」の絶縁システムと考えます。

二重絶縁

  • 基礎絶縁 + 保護導体
  • エンクロージャー + 保護導体
中の人
中の人
強化絶縁は厳密には違いますがイメージは

強化絶縁 = 基礎絶縁 + 基礎絶縁

つまり、二重絶縁に対しては基礎絶縁やエンクロージャーが破壊されたとしても、保護導体が生き残ります。

ジュンイチロウ
ジュンイチロウ
強化絶縁に対しては基礎絶縁が破壊されたとしても、もう一つの基礎絶縁が生き残こるということなんですね!
中の人
中の人
そうです。

実際には基礎絶縁に要求される絶縁距離(空間距離や沿面距離)を2倍にしたりしますよ

二重絶縁の単一故障時に基礎絶縁が破壊されるとき、それ以上の保護が無いので迷走電流が生じます。

もし、オペレーターが露出した導電部(例、制御盤の扉や機械のフレームなど)に触っていたら、迷走電流はオペレーターに流れます。

中の人
中の人
この状態を間接接触による感電と呼びます

その時にちゃんとした保護導体があれば、迷走電流は電気抵抗の低い保護導体から大地に流れていくことになり、電気抵抗高いオペレーターには流れなくなり、オペレーターは感電から保護されます。

中の人
中の人
これを間接接触による感電からの保護(故障保護)呼びます

保護導体はオペレーターが間接的に感電することから守られる最後の砦として、迷走電流を大地へ流す大事な役目があります。

保護導体を正しくつけることによって(故障保護)、オペレーターが間接接触による感電から保護されているイメージ保護導体を正しくつけることによって(故障保護)、オペレーターが間接接触による感電から保護されているイメージ

 

ジュンイチロウ
ジュンイチロウ
なるほど!

適当にアースやっとけなんて論外なんですね (T.T)

 

IEC 60204-1 保護導体の配線方法

IEC 60204-1 保護導体の配線方法でだいじなところ
  • IEC 60204-1 では保護導体の配線方法を規定しています
  • 誤った保護導体の配線は、かえってオペレーターを危険に晒します
  • 保護導体は緑色・黄色の組み合わせで、一つの端子に一つの接続です

重要度
エンカウント
対策の難しさ
コメント rank C 審査官が最初に見るところが保護導体の処理です。パッと見て出来・不出来が良くわかります。あまりイケていない配線方法や処理が見つかると実機全体をジロジロ観察されて、余計にあれもこれも指摘される原因です。

保護導体の配線方法さえ知っておれば対策は簡単です

IEC 60204-1にはPE 配線の方法について規定されています。

13 配線

13.1 接続及び経路

13.1.1 一般要求事項

全ての接続,特に保護ボンディング回路の接続は,不測の緩みが生じないようにしっかり固定しなければならない。

接続には,端末処理されている導体の断面積及び特性に適する手段を用いなければならない。

一つの端子に二つ以上の導体を接続することは,端子がそのようなことを意図して設計されている場合に限って許容される。

一つの端子接続点には,1本の保護導体だけを接続しなければならない。

(後略)

出典 JIS B 9960-1:2019

やってはいけない保護導体の配線の具体例

やってはいけない保護導体の配線の具体例を紹介します。

一つの端子に複数の保護導体をつなげるとPE 端子台のネジが緩みやすくなります。

PE 端子台が緩むと、やがて微弱な電流が保護導体端子の隙間やPE端子台の隙間に流れはじめ、それぞれの隙間に酸金皮膜をつくりだし電気抵抗が増します。

保護導体を通して大地に流れる予定だった故障電流は、保護導体とPE端子台の間の電気抵抗が高いため大地には流れず、露出した導電部を触っているオペレーターに流れて間接接触による感電を引き起こします。

一つの端子に複数のPE導体を接続 IEC 60204-1, cl13.1.1 違反の事例一つの端子に複数のPE導体を接続
IEC 60204-1, cl13.1.1 違反の事例

 

一つの端子に複数のPE導体を接続 IEC 60204-1, cl13.1.1 違反の事例一つの端子に複数のPE導体を接続
IEC 60204-1, cl13.1.1 違反の事例

 

一つの端子に複数のPE導体を接続 IEC 60204-1, cl13.1.1 違反の事例一つの端子に複数のPE導体を接続
IEC 60204-1, cl13.1.1 違反の事例

 

保護導体は緑色と黄色の組み合わせである必要があります。

保護導体が赤色  IEC 60204-1, cl13.2.2 違反の事例保護導体が赤色 
IEC 60204-1, cl13.2.2 違反の事例

 

ジュンイチロウ
ジュンイチロウ
保護導体のダブルがまし ダメ!ゼッタイ!

IEC 60204-1, cl13 に適合した保護導体(protective conductor) の配線方法

保護導体やPE 端子台には配線の方法だけではなく、他にもいろいろな決まりごとがあります。

  • (5.1) 外部保護導体用の端子を文字PEのマークやラベルで識別表示
  • (13.2.2) 他の導体と容易に区別できること
  • (13.2.2) 保護導体を色だけによって識別する場合は、全長にわたって緑色と黄色(その色の一つが保護導体表面の30 %以上70 %以下を覆い、残りの表面を他の色が覆うもの)との2色組合せを用いること
  • (13.2.2) 緑と黄との2色の組合せは保護導体に限定される
  • (13.2.2) 保護導体が全長にわたって明瞭に見えない場合は、端末付近や接近可能な場所に、PEマーク、文字でPE、もしくは、緑と黄との2色組合せによる明確な識別をしなければならない

保護導体やPE を表すマーキングは IEC 60417-5019 で決められています。

PEマーク IEC 60417-5019PEマーク IEC 60417-5019
中の人
中の人
保護導体やPE を表す文字(レター)は”E” 、”G”、”GND” ではないことに気をつけてください

IEC 60204-1, cl13.1.1 に適合した保護導体(protective conductor) の配線方法IEC 60204-1, cl13.1.1 に適合した保護導体(protective conductor) の配線方法

 

IEC 60204-1, cl13.1.1 に適合した保護導体(protective conductor) の配線方法IEC 60204-1, cl13.1.1 に適合した保護導体(protective conductor) の配線方法

 

IEC 60204-1, cl13.1.1 に適合した保護導体(protective conductor) の配線方法IEC 60204-1, cl13.1.1 に適合した保護導体(protective conductor) の配線方法

 

保護導体の配線方法は最初から理解しておけば簡単ですが、指摘されて改造するとなると大変です。

皆様のお役に立てたら嬉しいです。

ここまでお読みくださいましてありがとうございました。

規格は最新のものを参考にすべきですが、IEC 60204-1:2016 版の参照はJIS ハンドブックの年度が古くても使えます。

ABOUT ME
ジュンイチロウ
現役のリスクアセスメントエンジニア。 現在はドイツの安全部品メーカーで機械安全コンサルタントをしています。第三者認証機関で審査官の経験、機械安全トレーニング、セミナー講師の経験から、リスクアセスメント、CE 対策、NRTL 対策を解説します。 Certified Machinery Safety Experts, CMSE, TUVNORD