IEC60204-1の要求に適合するオペレーターを間接接触による感電事故から防ぐためのPEの正しい方法と誤った方法の4選

あらすじ

こんにちは!

今回は、IEC 60204-1 でPE 保護導体の正しい配線方法についてお話ししたいと思います。

PE 保護導体とは、Protective Earth の略で、電気機器の筐体や金属部分に接続される接地導体のことです。PE 保護導体は、電気機器の故障や漏電によって、筐体や金属部分が危険源になった場合に、安全に電流を地面に流す役割を果たします。PE 保護導体は、人身や財産の保護のために重要なものなので、正しく配線する必要があります。

では、IEC 60204-1 でPE 保護導体の正しい配線方法とは何でしょうか?

IEC 60204-1 は、電気機器の安全性に関する国際規格で、PE 保護導体の配線方法についても規定しています。IEC 60204-1 では、以下のような点に注意することが求められています。

  • PE 保護導体は、黄緑色の二色線で識別すること
  • PE 保護導体は、電源側から電気機器へ直接接続すること。中間の端子台やスイッチなどを介さないこと
  • PE 保護導体は、電気機器の筐体や金属部分に確実に接続すること。接続部分は錆びたりゆるんだりしないように定期的に点検すること
  • PE 保護導体は、適切な断面積を持つこと。断面積は、電気機器の定格電流や故障電流などを考慮して決めること
  • PE 保護導体は、過負荷や過電圧によって溶断されないようにすること。必要に応じてヒューズや遮断器などを設置すること

以上が、IEC 60204-1 でPE 保護導体の正しい配線方法です。PE 保護導体は、電気回路設計の基本中の基本ですが、意外と間違えているケースも多いようです。PE 保護導体の配線方法を正しく理解して、安全な電気回路設計を行いましょう。

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目次

PE や保護導体 (protective conductor) の目的

PE とは

IEC 60204-1 でPE 保護導体とは、機械の電気装置において、電気ショックや火災などの危険を防止するために、金属部品や筐体などを接地するための導体のことです。PE はProtective Earth の略で、保護接地導体とも呼ばれます。IEC 60204-1 は、機械の電気装置の安全性に関する国際規格で、日本ではJIS B 9960-1 として採用されています。この規格では、PE 保護導体の色や断面積、接続方法などについて具体的な要求事項が定められています。

PE (protective earth) とは

感電防止など、安全のために設けられた導体

注 電気設備ではPE と識別される導体は、通常、保護接地導体 (protective earthing conductor) としても考慮される

PE は故障時の感電防止のために外部導体に接続するための端子、または、保護接地(アース)電極の端子を識別することを目的としている

保護導体(protective conductor) とは

IEC 60204-1:2016 では保護導体(protective conductor)が定義されています。PE も保護導体(protective conductor)もほぼ同じ意味でオペレーターを感電事故から保護する意図をもった、安全を目的とした導体を意味しています。従来、保護導体は、「感電保護のために、次の部分を電気的に接続する保護ボンディング用導体。露出導電性部分、外部導電性部分、主接地端子」と定義されていました。

保護導体(protective conductor)

電気装置の露出導電性部分から保護接地(PE)端子への一次故障電流経路となる導体


JIS ハンドブック 72 機械安全(2022) [ 日本規格協会 ]
リスクアセスメント担当者や機械・電気回路設計者・EHS担当者にとって重要な規格が網羅されていて必携です。

JIS ハンドブック 72 機械安全
JIS ハンドブック 72 機械安全

感電からの保護とは?

直接接触と間接接触

感電とは何でしょう?

感電とは、人間や動物が電気に触れてしまったときに、電流が体内を流れることです。感電すると、痛みやけいれん、やけど、心臓や呼吸の停止などの重大な障害が起こる可能性があります。では、なぜ感電するのでしょうか?

感電する原因は、電圧と抵抗です。電圧とは、電気の力の強さを表すもので、単位はボルト(V) です。電圧が高いほど、電気の力が強くなります。抵抗とは、電気の流れを妨げる力のことで、単位はオーム(Ω) です。抵抗が高いほど、電気の流れが弱くなります。人間の体は、水分や塩分などを含んでいるため、電気を通しやすいです。つまり、人間の体は低い抵抗を持っています。一方、空気や木材などは、電気を通しにくいです。つまり、高い抵抗を持っています。

感電するときは、人間の体が電源とアースという二つの点に触れています。電源とは、電気を供給するもので、例えばコンセントや乾電池などです。アースとは、地面や金属などに触れることで、電気が地球に流れることです。

このとき、人間の体は電源と接地の間にある回路の一部になります。回路とは、電気が流れる道筋のことです。回路には、電圧がかかっています。つまり、回路の両端には電気の力が働いています。この力によって、回路内にある人間の体にも電流が流れます。電流とは、時間あたりに流れる電気の量のことで、単位はアンペア(A) です。電流が大きいほど、感じる痛みや障害も大きくなります。

では、回路内に流れる電流の大きさはどう決まるのでしょうか?それはオームの法則という公式で表されます。オームの法則とは、

電流(A) = 電圧(V) / 抵抗(Ω)

という式です。この式からわかるように、

  • 電圧が高いほど、電流も大きくなります
  • 抵抗が低いほど、電流も大きくなります

したがって、

  • 人間の体が高い電圧に触れると感電しやすくなります
  • 人間の体が湿っていたり汗をかいていたりすると感電しやすくなります

逆に

  • 人間の体が低い電圧に触れると感電しにくくなります
  • 人間の体が乾燥していたりゴム手袋などを着用していたりすると感電しにくくなります

感電の分類は直接接触による感電と関節接触による感電の2種類があります。直接接触と間接接触については、それぞれ定義があります。

直接接触(direct contact)

人又は家畜と充電部との接触。

間接接触(indirect contact)

絶縁故障によって充電状態となった露出導電性部分に人又は家畜が触れること。

ジュンイチロウ

100V の配線のコンセントに直接触ってビリビリくることを直接接触による感電と言い、
洗濯機の外側に触ってビリビリしていることを関節接触による感電言うんですね!

IEC 60204-1 では、感電を引き起こす電気的危険源からオペレーターを保護しなければなりません。直接接触による感電の保護を「基本保護」、間接接触による感電からの保護を「故障保護」と呼びます。基本保護と故障保護には定義があります。

基本保護(basic protection)

故障(絶縁故障)のない状態における感電からの保護

故障保護(fault protection)

単一故障状態における感電からの保護

直接接触に対する保護(基本保護)

IP2X 端子は「フィンガープロテクション」とも呼ばれ、人の指が入らない程度の保護等級になります。IP2X の端子カバーは危険な充電部をもつ端子台にも使われます。フィンガープロテクションとは文字通り指が危険な充電部(危険源)に到達できないようにする目的をもった物理的な保護方法です。

IEC 60204-1 に適合した外部からの保護導体(protective conductor) の接続、かつ、危険電圧の充電部にIP2X (フィンガープロテクション)の保護をメインブレーカーへ取り付け
ジュンイチロウ

「フィンガープロテクション」は端子台の中に直接指が入れないようにするのですね!

IP とは

IEC 60529:1989+A2:2013 に定義されたIP コードは、筐体(エンクロージャ)による保護等級を表します。IPは”Ingress Protection” の略で、日本語でいうと「進入に対する保護」みたいな感じになります。IP コードは、筐体内の機械や電気機器を外部からやってくるモノに対しての保護という意味です。IP コードは、危険な箇所への接近・外来固形物の侵入・水の浸入に対する保護の度合をコードで表します。この規格はJIS 規格においてJIS C 0920:2003 と整合化されています。

IP2X とは

IP コードは、複数の数字や英字で組み合わせて表されます。これを特性数字と呼びます。IP 以下から順番に最初の第一特性数字は物理的なモノが進入してくることに対しての保護です。第一特性数字が2 の場合は、外部からの指先や同等の大きさの物体が接触しないことを示します。

第一特性数字 2

  • 指での危険な箇所への接近に対して保護
  • 直径12 mm 長さ80 mm の関節付きテストフィンガーの先端と危険な箇所との間に適正な空間距離を確保している

第二特性文字は水の進入に対する保護を表し、X の場合は下記を意味します。

第二特性数字 X

  • 電気機器に「特性数字」を規定する必要がない場合、その非適用特性数字は、アルファベットのX に置き換えて示す

間接接触に対する保護 故障保護

直接保護は、指などの危険源への侵入を防止するための保護です。一方、間接接触に対する保護(故障保護)は、PEなどの保護導体が該当します。PEや保護導体が重要な理由の一つは、オペレーターの間接接触による感電(故障保護)からの保護を目的としていることです。

保護導体は漏洩電流対策、EMC (電磁両立性)対策、静電気対策などにも有効な手段です

電気回路がTN 系統でCLASS I 、かつ、PELV (保護特別低電圧)システムを用いている場合、絶縁トランスやスイッチング電源など、部品の内部に絶縁システムがあるものは大地に接地されています。

TN系統とは

TN-S系統: 系統の全体にわたって個別の中性線や保護導体をもつ
TN-S 系統: 系統の全体にわたって個別の中性線や保護導体をもつ

TN 系統はとは電源において1点を直接接地し、設備の露出した導電性部分を保護導体によってその点へ接続することを意味します。TN 系統の文字の意味は、1文字目は電力系統と大地との関係を、2文字目は設備の露出した導電性部分と大地との関係を意味します。

  • 1文字目 ”T” は1点を大地に直接接続する
  • 2文字目 ”N” は露出した導電性部分を電力系統の接地点(交流系統において電力系統の接地点は通常では 中性点、または、中性点がない場合は一つの線導体)へ直接接続する

単一故障からの保護

機械や電気の安全において、単一故障からの保護という原則があります。

「二重絶縁」とは、単一故障からの保護という原則に基づいて、二重の絶縁で機器を保護することを指します。多くの機械や電気部品は感電保護のために、絶縁の保護を行い、安全性を確保しています。二重絶縁は、「一つの保護方策」プラス「一つの保護方策」の二重の絶縁システムと考えることができます。強化絶縁については、厳密には違いますが、「基礎絶縁」プラス「基礎絶縁」と考えても良いかもしれません。二重絶縁がとられた絶縁システムにおいては、基礎絶縁やエンクロージャーのどちらか一方が故障されたとしても、最低保護導体が生き残ります。

絶縁システム 感電に対する保護手段として許容する組合せ

二重絶縁

  • 基礎絶縁 + 保護導体
  • エンクロージャー + 保護導体

二重絶縁の単一故障時に基礎絶縁が破壊されるとき、それ以上の保護が無いので故障電流が生じます。保護導体はオペレーターが間接的に感電することから守られる最後の砦として、故障電流を大地へ流す大事な役目があります。

オペレーターが露出した導電部(例、制御盤の扉や機械のフレームなど)に触っていた場合、故障電流はオペレーターに流れます。その時にちゃんとした保護導体があれば、故障電流は電気抵抗の低い保護導体から大地に流れていくことになり、電気抵抗高いオペレーターには流れなくなり、オペレーターは感電から保護されます。保護導体はオペレーターが間接的に感電することから守られる最後の砦として、迷走電流を大地へ流す大事な役目があります。

保護導体を正しくつけることによって(故障保護)、オペレーターが間接接触による感電から保護されているイメージ
保護導体を正しくつけることによって(故障保護)、オペレーターが間接接触による感電から保護されているイメージ

IEC 60204-1 保護導体の配線方法

IEC 60204-1にはPE 配線の方法について規定されています。

配線 接続及び経路 一般要求事項

全ての接続、特に保護ボンディング回路の接続は、不測の緩みが生じないようにしっかり固定しなければならない。接続には、端末処理されている導体の断面積及び特性に適する手段を用いなければならない。一つの端子に二つ以上の導体を接続することは、端子がそのようなことを意図して設計されている場合に限って許容される。一つの端子接続点には、1本の保護導体だけを接続しなければならない。

やるなよ やるなよ 絶対やるなよ 保護導体の配線の悪い見本

一つの端子に複数の保護導体をつなげると、PE 端子台のネジが緩みやすくなります。PE 端子台が緩むと、微弱な電流が保護導体端子やPE端子台の隙間に流れ始め、それぞれの隙間に酸金皮膜をつくりだし、電気抵抗が増加します。本来、保護導体を通して大地に流れる予定だった故障電流は、保護導体とPE端子台の間の電気抵抗が高いため大地には流れず、露出した導電部を触っているオペレーターに流れて間接接触による感電を引き起こす可能性があります。

アース ダブルがまし ダメ 絶対 

一つの端子に複数のPE導体を接続
IEC 60204-1, cl13.1.1 違反の事例

保護導体やPE 端子台には配線の方法だけではなく、他にもいろいろな決まりごとがあります。電気配線やケーブル内で、他の配線やケーブルと区別しやすくするため、形、位置、マーキング、または色で区別しなければなりません。色だけで区別する場合、全長にわたって緑と黄色を使う必要があります。ただし、保護配線以外では、形状や位置で区別しやすい場合や、アクセスしにくい場所にある場合、または多芯ケーブルの一部である場合、全長にわたって色分けする必要はありません。ただし、見えづらい場所では、IEC 60417-5019:2006-08(図16 参照)で定義されている図記号または文字PE、または緑と黄色の2 色組み合わせを使用して明確に区別する必要があります。

保護導体や保護ボンディング導体の識別

保護導体や保護ボンディング導体は、形状、位置、マーキング又は色によって他の導体と容易に区別できなければならない。色だけによって識別する場合は、全長にわたって緑と黄との2色組合せを用いなければならない。緑と黄との2色の組合せは、保護導体や保護ボンディング導体に限定されている。

絶縁保護導体の場合、緑と黄との2 色組合せは、どの部分の15mm の長さをとっても、その色の一つが保護導体表面の30% 以上70% 以下を覆い、残りの表面を他の色が覆うものでなければならない。

保護導体が、その形状、位置又は構造(例えば、編組導体、裸導体)によって容易に識別できる場合、または、容易にアクセスできない絶縁導体であるか、または、多芯ケーブルの一部である場合は、保護導体の全長にわたって色分けする必要はない。

ただし、導体が全長にわたって明瞭に見えない場合は、端末付近、または、接近可能な場所に、IEC 60417-5019:2006-08 (図16 参照)に規定する図記号、または文字PE、もしくは、緑と黄との2 色組合せによる明確な識別をしなければならない。

保護導体やPE を表すマーキングは下記のように IEC 60417-5019 で決められています。保護導体やPE を表す文字(レター)はE, G, GND ではないことに注意してください。

PEマーク IEC 60417-5019
シンボル 保護アース(PE) IEC 60417-5019

保護導体の適切な配線方法 4選

IEC 60204-1, cl13.1.1 に適合した保護導体(protective conductor) の配線方法

IEC 60204-1, cl13.1.1 に適合した保護導体(protective conductor) の配線方法

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保護導体の配線方法は、最初から理解しておくと簡単ですが、指摘されて改造すると大変です。皆様のお役に立てたら嬉しいです。ここまでお読みいただき、ありがとうございました。

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