リスクアセスメント

機械規則(Machinery Regulation)とは。機械指令(Machinery Directive)との違い。機械規則発行後30ヶ月で困らないために今からどう対策すればいいのかを解説。

この記事の大事なところ
  • 機械指令 (Machinery Directive) は機械規則 (Machinery Regulation) にかわります
  • 機会指令は機械規則発行後30ヶ月で廃止されます
  • 機械規則はAI などのデジタル技術などの新技術の要求に応えるようになりました

もし、あなたが、下記のような機械装置のヨーロッパ向け設計担当者とします。ヨーロッパに上市するためにはCE マークを貼り、機械指令に適合する必要があります。

しかし、将来、機械指令は機械規則にかわります。

機械規則に変わってから対策をすると、流れに乗り遅れ、困ったことになるかもしれません・・・

この記事では、指令や規則の立ち位置と機械指令が機械規則に変更になる背景を説明します。

ジュンイチロウ
ジュンイチロウ
規則や指令とか何がいったい違うのですか??
JIS ハンドブック 72 機械安全JIS ハンドブック 72 機械安全

 

機械指令の重要な整合規格はJIS 化されています。JIS 72 機械安全ハンドブックは初学者からベテラン技術者まで使うことができる良書です。機械安全担当者は必携です。

指令・規則 説明

制度の単語の解説はEU law で解説されています。

EU 条約に定められた目的は、いくつかの種類の法的行為によって達成されます。拘束力のあるものもあれば、そうでないものもあります。一部はすべてのEU 加盟国に適用され、その他はほんの一部に適用されます。

Regulation 【規則】

「規則」は拘束力のある立法行為です。EU 全体に完全に適用する必要があります。

  • 例えば、EU がEU 域外から輸入された商品に共通のセーフガード(保障措置)があることを確認したい場合、理事会は規則を採用します。
Directive 【指令】

「指令」とは、すべてのEU加盟国が達成しなければならない目標を設定する立法行為です。

  • ただし、これらの目標を達成する方法について独自の法律を考案するのは、各国の責任です。
  • 一例として、EU 消費者権利指令があります。この指令は、インターネット上の隠れた料金や費用を排除し、消費者が売買契約から解除できる期間を延長することにより、EU 全体の消費者の権利を強化します。
Decision 【決定】

「決定」は、それが宛てられた人々(例えば、EU の国または個々の会社)を拘束し、直接適用されます。

  • 例えば、EU 委員会は、さまざまなテロ対策組織の活動に参加しているEUに関する決定を発表しました。決定とは、こういう組織に限定して適用されます。
Recommendation 【勧告】

「勧告」は拘束力を持ちません。

  • 例えば、EU 委員会が、「EU 加盟国の法務当局が、司法サービスが国境を越えてより適切に機能するのを支援するためにビデオ会議の使用を改善するよう」勧告したとき、これは法的影響を及ぼしませんでした。
  • 勧告により、委員会は彼らの見解を公表し、それが宛てられた人々に法的義務を課すことなく行動方針を提案できます。
Opinion 【意見】

「意見」とは、拘束力のない方法です。

  • 言い換えれば、それが宛てられた人々に法的義務を課すことなく声明を出すことを可能にする手段です。意見は拘束力を持ちません。
  • これは、主要なEU 機関(委員会、評議会、議会)、地域委員会、およびEU 経済社会委員会によって発行されます。法律が制定されている間、委員会は特定の地域的または経済的および社会的観点から意見を述べます。
ジュンイチロウ
ジュンイチロウ
機械指令と機械規則は同じものかと思っていましたが、違ったんですね!
中の人
中の人
そうですね。

機械規則は「機械指令から義務化がワンランクアップした」ということです。

機械規則 ドラフト版 解説

新しく採用される機械規則は2021 年4月にドラフト版として公に知られることになりました。(ドラフト版なので何か変更になるかもしれません)

機械指令 (2006/42/EC) 目的

従来の機械指令 (2006/42/EC) の目的を説明します。

機械指令の目的

機械指令は、単一市場に機械を設置するための規則の枠組みを確立しています。機械指令の一般的な目的は次のとおりです。

  • 域内市場内での機械の自由な移動を確保する
  • ユーザーおよびその他の被ばく者に対して高いレベルの保護を確保する

 

NEW アプローチと機械指令

機械指令は、EU 法の「NEW アプローチ」の原則に従います。

NEW アプローチとは、技術的に中立であるように意図的に記述されます。

NEW アプローチの要件に準拠するためには、特定の技術ソリューションを規定することはせずに準拠すべき必須健康安全要求事項 (EHSR) を定めています。

中の人
中の人
機械指令に適合するためには、EHSR の要求を満足するということです!

機械指令の改定の必要性

REFIT (EU 法をもっとシンプルに低コストで使いやすくするということを委員会に助言するプログラム)は下記のことを特定しました

  • すべての利害関係者は、機械指令は本質的な法制度であることを確認してはいるものの、機械指令を改善し、簡素化し、市場のニーズに適合させる必要性がある
中の人
中の人
機械指令が、技術革新のスピードの早い現代に合ったものではないことに気づいたんです

この時、EU 評議会の一部は、特に21世紀に向けて「法制化」し、EU 経済の革新を促進するために、機械指令の改訂への支持を表明しました。

中の人
中の人
法制化、すなわち、指令から規則に格上げされた瞬間です

 

デジタル時代にふさわしいヨーロッパへ

「デジタル時代にふさわしいヨーロッパ」という優先順位の下でのEU 作業委員会プログラム2020 の一環として、機械指令 2006/42/EC の改訂は、デジタル移行と単一市場の強化に貢献するものと位置づけられました。

実際、新技術とその安全の法制度への影響に関して、EU 作業委員会は2020年2月にAI に関するホワイトペーパーを発行しました。

  • 「AI 、モノとインターネット、ロボット工学の安全性と責任への影響に関するレポート」

 

新技術の影響とそれらがEU 連合の安全の法制度にもたらす課題の分析を行ったレポートは、現在の製品の安全の法制度は、とりわけ機械指令には対処する必要のある多くのギャップが含まれていると結論付けました。

中の人
中の人
Iやインターネットなどの、デジタル新技術が組み込まれた機械には、従前の機械指令のEHSR を当てはめようとしても、乖離がありすぎるんですwww

さらに、機械はエンジニアリング産業の不可欠な部分であり、EU 経済の産業の柱の1 つであり、機械指令の改定はCOVID-19 からの持続可能な回復にさらに関連していくものとレポートされました。

ジュンイチロウ
ジュンイチロウ
機械指令を新しくして、より良い安全な機械を作って、売りまくって、EU の経済をよくしようということだっ!

機械指令で発見された新たな課題

機械指令の評価で強調された要素と、機械指令の影響評価書で作成された要素に対応するために、言うまでもなく、デジタル化に関する委員会の政策目標に対応するために、あたらしく機械指令から機械規則に取って代わり、新たな課題に取り組むことになりました。

新たな課題

  1. 機械指令は新興技術に起因する新しいリスクを十分にカバーしていないこと
  2. 対象範囲や定義が明確でないことによる法的な不確実性。 従来の技術では安全性に欠ける可能性があること。
  3. リスクの高い機械の準備が不十分
  4. 膨大な紙ベースの文書化による金銭的、環境的コスト
  5. EUの他の製品安全との不整合
  6. 指令の適用の解釈の相違
中の人
中の人
この新たな課題を解決することを目的として、新しい機械規則というものを作っていこうとなり、新しい提案がされました

械規則で新しく変わる内容

適用範囲と定義

提案されている機械規則の範囲は変わらないが、第1条に主題を追加し、範囲の表現を調整し、機械の定義に新たな要求を追加することで、機械規則の範囲と定義を明確化しました。

第1条 対象事項
この規則は、機械製品の市場投入または使用開始を可能にするために、機械製品の設計および構造に関する要件を規定する。
また、EU 域内での機械製品の自由な移動に関する規則を定めたものである。

中の人
中の人
つまり、機械規則について「この規則にはこんなことが書いてあるんですよー」っていう、宣言みたいなものです

この要求には、特定の用途を意図したソフトウェアのアップロードのみが行われていないアッセンブリー製品が含まれており、製造業者がこれらを半完成機械として分類することを防ぐためのものでもあります。

第3条 定義 (18)

安全部品の定義が明確化され、ソフトウェアなどの非物理的な部品も含まれるようになりました。

実質的な改造を受けた市場に出回る機械や使用される機械が、新付属書 III の必須安全衛生要件(EHSR) に適合していることを保証するために、「実質的な改造」の新しい定義が追加されました。

第3条 定義 (18)

「実質的な変更」とは、機械製品が市場に出された後、または使用された後に、物理的またはデジタル的な手段で機械製品を変更することを意味する。

「実質的な変更」とは

  • 製造者が予見しなかった物理的またはデジタル的手段による機械製品の変更で、かつ、
  • その結果、機械製品が関連する本質的健康および安全要求事項に適合するかどうかが影響を受ける可能性があるもの

 

NFL の関係

機械規則にはNLF (NLF とは市場監視を改善し、適合性評価の質を高めることを目的とした措置の取り組み)の一般的な定義が挿入されました。

機械規則では、機械で対処すべきリスクが新付属書III に想定されていない場合、他の特定のEU の整合規格の適用についても明確にしています。

例外があります。道路上の輸送手段(車両)や低電圧指令に該当する電気・電子機器は機械規則から除外されます。

 

ハイリスク機械

新付属書I にハイリスク機械のリストが追加されました。

機械指令IV のリストは時代遅れであり、技術的進歩や、AI が安全機能を確保している機械など、ハイリスクをもたらす新しいタイプの機械に適応させました。

経済事業者の義務

製造業者・輸入業者・販売業者の義務を盛り込み、NLF の 決定との整合性を図ることになり、経済事業者の責任に見合ったそれぞれの義務が明確になりました。

定義に基づいて機械が実質的に変更された場合、機械を変更した者が製造者となり、関連する義務を順守しなければなりません。

機械のサプライチェーンの複雑化に伴い、経済事業者以外の機械のサプライチェーンに関わる第三者の一般的な協力義務が生じました。

中の人
中の人
ここ、メチャクチャ大事です!
機械が実質的に変更された場合、機械を変更した者が製造者となり、関連する義務を順守しなければならないということです!

機械類の適合性の推定

EU 官報に掲載された関連する整合規格、または、その一部を製造者が適用した場合の機械類の適合性の推定は維持されます。

しかし、整合規格がない場合の推定適合性を確保するために、EU 委員会は技術仕様書を採択する権限を有します。

これは、標準化団体が規格を提供できない場合や、欧州委員会の標準化要求や付属書III の必須安全衛生要件に対応していない規格を提供した場合にのみ使用される予備的な選択肢です。

ジュンイチロウ
ジュンイチロウ
具体的にどのようなものが技術仕様書に該当しますか?
中の人
中の人
よく知られた技術仕様書を一つ挙げるとすれば「協働ロボット(ISO/TS 15066)」です。

規格に格上げするには投票などが必要で時間がかかるし、規格になったらもはや時代遅れかもしれないので、とりあえず規格になるまでは、技術仕様書ですすめて行きましょうということです。

適合性評価

ハイリスクに分類されていない機械については、製造者による内部チェックのオプションを維持しています。

しかし、ハイリスクの機械については、新付属書I が必要に応じて技術進歩に適応されることと、NLF との整合性を考慮して、製造者が関連する整合規格を適用している場合でも、第三者認証のみが認められます。

中の人
中の人
新付属書I 記載のハイリスク機械については、第三者認証機関しか適合性が評価できないということです

ノーティファイドボディ (NB: Notified Body)

NB が適切に機能することは、高水準の健康と安全の保護を確保し、ニューアプローチシステムに対するすべての利害関係者の信頼を得るために不可欠です。

そのため、機械規則では、国家機関としての適合性評価機関(NB) に責任を定めています。

NB の指定と監視に関する最終的な責任は、各加盟国に委ねられています。

中の人
中の人
世の中にはたくさんのノーティファイドボディがありまして、あっちは超厳しかったり、こっちは激甘だったりと、評価レベルがまちまちなのが実情でして、そういう不均衡をなくしましょうということですwww

機械規則 付属書 III  (機械製品の設計と製造に関する必須健康安全要求事項)具体的な変更点

機械指令 Annex I  (必須健康安全要求事項)は、機械規則 Annex III  (機械製品の設計と製造に関する必須健康安全要求事項 )に変わります。

EHSR の変更点

EHSR 1.1.2. 安全統合の原則

  • 機械のユーザーが機械の安全機能をテストするようになりました

 

EHSR 1.6.1. メンテナンス

  • オペレータが機械の中に閉じ込められたときに、タイムリーかつ安全に救助できるような構造になりました

 

デジタルドキュメントの変更点

インストラクション EHSR1.7.4、および、製造者の適合宣言に関する新付属書 V

  • 製造者がインストラクション、および、適合宣言書をデジタルで提供することが認められました
  • ただし、要望があれば紙媒体での提供も必須です

 

インストラクション EHSR 1.7.4

  • 機械からの有害物質の排出に関する情報を要求することができるようになりました

EHSR 1.1.2 安全統合の原則
EHSR 1.6.1 機械製品のメンテナンス
EHSR 1.7.4 インストラクション

 

新しいデジタル技術を搭載した機械に必要な健康と安全の要件

メーカーが機械の市場投入/稼働前に実施しなければならないリスクアセスメントには、機械の進化や自律的な動作によって市場投入後に発生するリスクも含める必要があります。

安全性に影響を与えるサイバーセキュリティ 悪意のある第三者の行動から生じるリスクに対処するという観点から、機械規則では機械の安全性に影響を与えるサイバーセキュリティを追加しました。

機械規則では新たに変造からの保護 EHSR 1.1.9 を追加し、制御システムの安全性と信頼性に関する EHSR 1.2.1 を追加しその要求を明確にしました。

EHSR 1.1.9 変造からの保護
EHSR 1.2.1 制御システムの安全性と信頼性

 

人間と機械の相互作用

機械はより強力で自律的になり、中には人間のように見えるものもあります。

そのため人間と機械の接触に関連するEHSR、すなわち人間工学に関するEHSR 1.1.6 や、可動部品や心理的ストレスに関連するリスクに関するEHSR 1.3.7 を適応することになりました。

EHSR 1.1.6 人間工学
EHSR 1.3.7 可動部のリスクや心理的ストレスに関するリスク

 

進化する能力を持つ機械

AI システムのリスクは、AI に関するEU の法律で規制されています。

機械規則では、AI システムを含む機械部品間の相互作用を考慮して、機械全体の安全性を確保しなければなりません。

この点については、以下のEHSR の一般原則 が適応されました

  • EHSR  1.1.6  人間工学
  • EHSR 1.2.1  制御システムの安全性と信頼性
  • EHSR  1.3.7  可動部品と心理的ストレスに関するリスク

機械安全のトレーサビリティー

機械の安全性は、その機械が市場に出回った後のソフトウェアの動作に依存するようになってきています。

適合性評価プロセスと市場サーベイランスをサポートするために、制御システムの安全性と信頼性に関するEHSR 1.2.1 と、新付属書IV の技術ファイルに必要な情報にいくつかの新しい要求事項が追加されました。

最終規定

機械規則は、製造業者、通知機関、および加盟国が新しい要求事項に適応する時間を確保するために、

機械規則の発効から30カ月後に適用されます。

新しい要求事項への円滑な移行を保証するために経過措置が定められており、その後、機械指令 2006/42/EC は廃止され、本機械規則案に置き換えられます。

 

機械規則 付属書の変更対照表

機械規則の付属書の機会指令からの変更点を表にしました。

参考にしてください。

機械指令と機械規則の新付属書の対応表
機械指令 2006/42/EC  機械規則
付属書 I 機械類の設計と製造に関する必須健康安全要求事項 付属書 III
付属書 II 宣言書 付属書 V
付属書 III CE マーキング
付属書 IV 手順を適用しなければならない機械類のカテゴリー 付属書 I
付属書 V 安全部品の例示リスト 付属書 II
付属書 VI 半完成機械類に関する組立て用の取扱説明書 付属書 X
付属書 VII 機械類に関する技術ファイル・半完成機械類についての関連技術文書 付属書 IV
付属書 VIII 機械類の製造についての内部検査による適合性の査定 付属書 VI
付属書 IX EC 型式試験 付属書 VII
付属書 X 完全な品質保証 付属書 VIII

 

まとめ 機械規則の導入前に知っておくこと8選

最後に機械指令と機械規則の必須安全要求事項(EHSR) 主な変更点をまとめます。

機械規則 EHSR
(新付属書 III)
 
機械指令からの変更点 
1 EHSR 1.1.2
安全統合の原則
機械のユーザーが機械の安全機能をテストするようになりました
2 EHSR 1.1.6
人間工学
AI システムを含む機械部品間の相互作用を考慮して、機械全体の安全性を確保するようになりました

人間と機械の接触に関連する要求が増えました

3 EHSR 1.1.9
変造からの保護
悪意のある第三者の行為から生じるリスクに対処するべく、サイバーセキュリティー対策が追加になりました
4 EHSR 1.6.1.
メンテナンス
オペレータが機械の中に閉じ込められたときに、タイムリーかつ安全に救助できるような構造になりました
5 EHSR 1.2.1
制御システムの安全性と信頼性
制御システムの安全性と信頼性の要求が明確になりました
6 EHSR 1.3.7
可動部のリスクや心理的ストレスに関するリスク
ロボットなどの可動部品に接触する際の心理的ストレスに関連するリスクに関する要求が増えました
7  EHSR1.7.4
インストラクション、および、製造者の適合宣言に関する付属書 V
製造者がインストラクションや適合宣言書をデジタル媒体で提供することが認められました
8 EHSR1.7.4
インストラクション
機械からの有害物質の排出に関する情報を要求することができるようになりました

 

ここまでお読みくださいまして、ありがとうございました。

規格は最新のものを参考にすべきですが、ISO 13849-1:2015 版の参照はJIS ハンドブックの年度が古くても使えます。持っていない方はぜひ入手して下さい。

ABOUT ME
ジュンイチロウ
現役のリスクアセスメントエンジニア。 現在はドイツの安全部品メーカーで機械安全コンサルタントをしています。第三者認証機関で審査官の経験、機械安全トレーニング、セミナー講師の経験から、リスクアセスメント、CE 対策、NRTL 対策を解説します。 Certified Machinery Safety Experts, CMSE, TUVNORD