
リスクアセスメント初心者はココを見落とす!安全機器の無効化、制御盤、周囲の危険源…現場のリアルな学び【3日目】

目次
ジュンイチロウさんとリスクアセスメントに行ってみた! 3日目の記録

こんにちは! ジュンイチロウさんの弟子 ガンタです!
今回もリスクアセスメント初心者の私が経験した、「やっとけばよかった!」ポイントをシェアしていきますね。



やっとけばよかった!
引き続き、今回は3日目の現場での学びをお届けします。2日目と作業内容自体は同じだったのですが、設備が違うと新たな発見があって、やっぱり同じようにいかないところが面白いなと思いました!
この日に行ったリスクアセスメントの作業は、機械が停止している状態での確認がメインでした。具体的には、以下の内容でした。
- 危険源の同定(どんな危険なことが起こりうるか想像して、写真にパチリ!)
- センサー機能の確認(ライトカーテンと危険源の距離を測ったり)
- PLr の計算、そして対策案とそれに合う製品を選ぶリスト
では、実際に現場で気づいたポイントを詳しく見ていきましょう!
現場で気づいたポイント:安全機器の「無効化」に要注意!
リスクアセスメントを進めていると、「あ!見つけてしまった・・・」と思わず声が出そうになる現象に、かなりの確率で出会います。



あ!見つけてしもた・・・
安全対策を考えるとき、以下を考慮します。
機械の構造で安全を確保する「本質的安全設計」
安全柵や安全機器の採用といった「安全防護および付加保護方策」
安全機器は、たとえ故障しても安全な状態になるように設計されている、とっても頼りになる存在です。でも、この安全機器に関することで、私はいつも少し残念な気持ちになってしまう光景を目にすることがあります。
危険なことが起こる可能性が予見される場所には、多くのメーカーが安全機器を取り付けていることが多いです。安全機器にもいろいろな種類があるのですが、共通して言えるのは、「本当に適切に安全機器を使えていますか?」ということなんです。



本当に適切な安全機器なんやろか?
皆さんの現場はいかがでしょうか? 安全機器がついていると、正直ちょっと使いづらいな、と感じる場面もあるかもしれません。
あ、そうだ、あたかも安全機器がちゃんと機能しているように見せかけちゃおう!
なんて発想、オペレーターだけのものではないですよね?「いやいや、私はそんなことしませんよ!」と思っているそこのあなた、ではちょっと胸に手を当てて、この質問に正直に答えてみてください!



今までの人生で、車が全然来ていない赤信号の横断歩道を渡ったことがある方、正直に手を挙げてください!(笑)
ご安心ください!わたくしガンタも、皆さんと全く同じように、実は何度か「誰も見てないしいいかな?」なんて思って、つい近道をしてしまった経験があります。特に地方の深夜、コンビニに行くだけなのに…なんて思っちゃうんですよね。そうなんです!



人間は誰しも、ついつい楽な方を選んでしまったり、近道をしたくなってしまう生き物なんです。
これが、実際の機械の現場で起こらないと言い切れるでしょうか? 機械を止めっぱなしにしたくないから、リミットスイッチを紐で固定して常に押された状態にしてしまったり、ドアスイッチに差し込むタン形状の機器を扉から外して、スイッチに差しっぱなしにしてしまったり…。このような行為を「安全機器の無効化」と呼びます。





扉からアクチュエータを取り外して「無効化」している状態です
「無効化」とはISO 14119:2024 で以下のように定義されています。
- 無効化
-
合理的に予見可能な方法で無効化すること。
合理的に予見可能な行為、すなわち、手動または容易に入手できる物体を使用して、インターロック機器を動作不能にしたり、バイパスしたりすることによって、設計者が意図しない方法で機械を使用したり、必要な保護機器なしで使用したりすること。
つまり「無効化」とは、インターロック装置を機能させなくしたり、本来のルートを通らずにバイパスしたりする行為で、結果として機械が設計者の意図しない方法で、必要な安全対策がない状態で使われてしまう状態を指します。
なぜ安全機器は「無効化」されるのか? ISO 14119:2024 が示す対策
今回の現場でも、残念ながら「無効化」がされてしまっている場所がありました。ジュンイチロウさんは、こういうのを見つけるのが本当に早くて驚きました。
ここで大切なのは、「安全機器がついているからここは大丈夫!」と安易に判断してリスクアセスメントシートに記入しない、ということです。もし無効化が簡単にできてしまう状況なら、その「無効化の可能性」をきちんとリスクアセスメントシートに書き留めることが重要なんです。せっかく安全機器を取り付けても、その意味がなくなってしまう状況を簡単に作り出せてしまうこと自体が問題である、という認識に改める必要があるんですね。
多くの現場では、オペレーターが作業効率を優先して、様々な方法で無効化を試みることがあります。ISO 14119:2024 の中でも、無効化を防ぐためのいくつかの対策例が紹介されています。その中には、安全機器を高いところに設置したり、オペレーターが場所を特定しにくいように隠して設置したりといった暫定的な対策も書かれています。でも、近くに簡単に使えるはしごや台があったり、隠していても取り付けが簡単で取り外しやすかったりすると、オペレーターは気づいた途端に、無意識のうちに無効化をしてしまう可能性も十分に考えられます。



インターロック機器の種類に応じて、無効化の可能性が予見される動機が引き続き存在する場合の、追加対策の表です


それに、こうした不十分な対策だと、もしEU圏に機械を輸出する場合、そもそも機械を稼働させることができなくなってしまう可能性が予見されます。万が一、事故が起こってしまったら、責任を追及されてしまう可能性も予見されます。まさに、設計者とオペレーターの「いたちごっこ」になってしまうんですね。
一番確実な方法は、安全機器そのものの性能として、無効化ができないような機能が内蔵されているものを選ぶことです。日本のメーカーではまだ少ないかもしれませんが、ヨーロッパのメーカーの安全機器は、基本的にこの無効化防止機能が内蔵されたタイプを多く出しています。



グローバル市場を代表する、シュメアザール社製 安全スイッチ「RSS260 シリーズ」
Type 4, RF-ID, High coded, 診断出力、短絡検出、短絡監視、直列接続可能, PL e/Cat 4, SIL 3, PFH=6.80 x 10⁻¹⁰


無効化を防ぐ最も確実な方法:Type 4, RF-IDタイプの安全機器
ISO 14119:2024 にはType 4 について以下のように定義されています。
- Type 4 インターロック機器
-
インターロック機器、アクチュエーター付き非接点ポジションスイッチ
シュメアザール社製「RSS260 シリーズ」に代表される安全スイッチは「RF-ID タイプ」と呼ばれるISO 14119 による TYPE 4 の安全機器に分類されます。その原理は少し面白いんです。実はアクチュエータに、実は小さなIC チップとコイルが入っています。そして、安全機器の本体側には磁気(磁場)センサーが内蔵されていて、この磁気を使ってアクチュエータのIC チップ情報を読み取る仕組みになっています。
こうすることで、特定のID を持つアクチュエータだけを認識できるようになるので、他のアクチュエータを差し込んでも反応しないようにできるんですね!つまり、皆さんが毎日使っているSuica やPASMO のような原理なんです。つまり、TYPE 4, RF-ID タイプの安全機器とは、 皆さんのIC カードにIC チップとコイルが入っていて、改札機には磁気(磁場)が入っている、というイメージです。



少しマニアックな話になりますが、皆さん、昔理科の授業で「電磁誘導」という現象を勉強したのを覚えていますか?
右ねじの法則で習った、磁場の向きによってその周囲にあるコイルに電流(誘導電流)が流れる現象のことでしたね。つまり、アクチュエータを安全機器本体に近づけることで、本体から発生している磁場にアクチュエータ内部のコイルが反応して電流が流れ、IC チップが読み取られる、というわけなんです。
少し話がそれてしまいましたが、このように安全機器は様々な技術を応用して、安全規格に対応していくんですね。もちろん、高性能になる分、価格はどうしても上がってしまうかもしれません。ただし、現状の安価な安全機器を隠して取り付けたり、高いところに取り付けたりといった別の方法でコストを抑えようとしても、結局オペレーターとの無効化のいたちごっこが始まってしまい、最悪の場合、事故が起こってしまったら、取り返しのつかないほど大きなコストや手間がかかってしまい、会社が傾きかねないような事態も起こりえてしまいます。
最初からTYPE 4, RF-ID タイプの安全機器を選んでおけば、結果的に安く済んだ、というお客様も多いようです。



このようなことにならないためにも、私は最初からTYPE 4, RF-ID タイプを強くお勧めします!



とはいえ、信頼のあるメーカーにしましょう。
例えば、使い方の相談にのってくれる。コストをかけない方法を教えてくれる。こういうメーカーが良いと思います。



不良品、オーバースペック品、使いにくい部品(TYPE 3)を売りつける、嘘がバレなきゃそれでいい、極悪クソメーカーがあるので気をつけてください!
現場で気づいたポイント:制御パネルと制御盤の場所に気をつけよう!



皆さん、リスクアセスメントで意外と見落としがちなポイントがどこか知っていますか?
それは、機械の「制御」に関わる部分なんです。リスクアセスメントを始めるとき、つい危険源から探し始めてしまうことが多いのですが、危険源を探す前に、まずは機械の「制限の決定」をしますよね。この時、オペレーターの通常の作業(機械の立ち上げや終了時)やメンテナンスで、必ず制御パネルや制御盤が出てくるはずです。ここでぜひ注意していただきたいのが、これらの設置場所なんです。
「制御パネルや制御盤の場所に決まりがあるの?」と驚かれた方もいらっしゃるかもしれませんが、これも実はISO 12100 という安全規格の「本質的安全設計方策」の中にきちんと記載されているんです。今回の現場でも、実は2つの良くない事例を見つけたので、皆さんに注意喚起する意味も込めてご紹介させていただきます。
事例1:ガード(安全柵)の内部に制御盤がある
ISO 12100 の6.2.2.1項「幾何学的要因」に以下の要求があります。
- 制御位置からの作業区域及び危険区域に対して、直接の視認性が最大となるように機械類の形状を設計する
- リスト機械の設計は、危険区域に暴露されている人が誰もいないことをオペレーターが主操作位置から確かめることができるようにしなければならない
今回の設備のようにガード内部に制御盤がある状態というのは、ガードの中の危険な区域に人がいる状態で機械を操作してしまう可能性がある、ということになるんです。もちろん、ガードの中にいるので、制御パネルで操作する人は装置全体をしっかりと見ることができませんよね。
の内部に制御盤がある-1024x768.jpg)
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これを知らなかった、という方が意外と多くいらっしゃいます。特に大きな機械であればあるほど、「作業効率がいいから」という理由でガード内部に設置してしまいがちなんです。購入した機械に最初から制御パネルがついている場合は問題ないのですが、作業工程が複雑になってくると、いくつかの機械を組み合わせてラインを作ることがありますよね。この時、ユーザー側で制御パネルを別に作成することがあるかと思います! そんな時には、必ずガード(安全柵)の外に置くことをマストにしてください!
これはリスクを減らすための対策の順番で、一番最初の「本質的安全設計方策」に関わることなので、ここから対策を考えなくてはいけなくなってしまいます。「一度設置した制御パネルを動かすなんて、もうスペースがないし、配線も足りない…」なんてことになりかねません。
一度設置した制御盤を動かすなんて、もうスペースがないし、配線も足りない…



要対策!



制御盤はガードの外!
また、工場内で最初はガードの外側にあったのに、レイアウト変更の際にそのままになってしまって、後からガードを追加したら制御パネルがガードの内側に取り残されてしまった…なんて事例も多くあるようです。
事例2:制御盤が機械に「組み込み式」になっている
今回の設備の中に、制御盤が機械の内部に組み込まれているものがありました。お話を聞くと、この組み込み式の制御盤は、製造メーカーが来ないと中を見ることができないとのことでした。というのも、製造メーカーの立ち合いがない状態で内部をいじった形跡があった場合、保証の対象外になってしまうことが理由でした。したがって、今回は図面だけを見てリスクアセスメントを行う必要がありました。
回路図面は見せていただいたのですが、実際に制御盤の中を見ることができないというのは、リスクアセスメントの質を大きく下げてしまう行為になってしまいます。
例えば、改定される前の古い図面しか管理されておらず、図面と実際の制御盤内部の配線が違っていたり、適切な安全回路が組まれていなかったりする可能性が予見されます。そして何よりも、制御盤で特に重要な「感電」から身を守るための対策がきちんと取られているかどうかを確認できないためです。
制御盤での危険源は基本的に感電ですので、目に見えない危険だからこそ、特に重要な対策が求められます。制御盤の感電保護については、IEC 60204-1 という安全規格に細かく記載されています。古い機械だと、全く対策が取られていない制御盤なんかも存在しているようです。そうなると、この制御盤に関する本来記載すべき危険な事象をリスクアセスメントシートに書き漏らしてしまったがゆえに、いざ事故が起きてしまった際に取り返しのつかないことになってしまう可能性が予見されます。
このような組み込み式の機械がどうしても現場にある場合のリスクアセスメントでは、例えば、リスクアセスメントを行う当日にメーカーを呼んで立ち会ってもらう、リスクアセスメントでは内部を触ったりすることは基本的にないので、事前に開けられるように準備しておく、といった対策が考えられます。これもやはり、事前の準備がリスクアセスメントのクオリティを高める上で非常に重要な要素なんです。
機械安全の基本思想:「壊れる」を前提に考える
機械を注文する際に、製造メーカーに対して適切な安全回路を組むように仕様を決めておくことが最も重要と言えるでしょう。結局、リスクアセスメントをしても「問題ないですね!」と言われるような制御盤を、最初から作成してもらうに越したことはありません。最初の導入時に時間と費用がかかってしまうかもしれませんが、その後の改造や点検、メンテナンス、そしてリスクアセスメントのしやすさを考えると、この時に制御盤を開けられる仕様にして、かつ適切に設計してもらうことが、実は最もコストパフォーマンスが高いのです。もし制御盤で何かあった際に、いちいちメーカーを呼んで点検するだけでも、多くの手間と費用がかかってしまいますし、生産も遅れてしまいますよね。
導入時にどうやってメーカーに仕様を伝えたらいいか分からない、という場合は、私たちのような機械安全コンサルタントにご相談いただくのも一つの方法です。機械導入時には基本的にリスクアセスメントが必要で、ユーザーはメーカーに対してそのレポートを要求できる権利があります。もしこれさえも嫌がるメーカーであれば、今後安全に関して問い合わせても何も対応してくれない可能性が予見されるので注意が必要です。
機械安全の基本的な考え方として、機械は「壊れる」ことが前提です。欧州ではこの考え方がスタンダードですが、日本人は昔から機械は壊れないことを前提に考えがちです。機械が壊れる可能性を前提に設計を考えると、おのずと制御盤の位置はどのような方が良いかが見えてくるのではないでしょうか。
今回のリスクアセスメントで、つい忘れがちな制御パネルや制御盤の位置を適切に設置することが、いかに重要かということを改めて痛感しました。
ジュンイチロウさんは、こうなることを見越して、事前にお客様には「制御盤の内部を見られるように準備しておいてくださいね」と伝えてあったそうです。



リスクアセスメント時に制御盤の内部を見られるように準備しておいてくださいね
しかし、その意図がお客様には十分に伝わらなかったようで、準備しようとは思わなかったようです。私も実際にリスクアセスメントを行って、レポートを作成する過程で初めてその重要度が深く理解できたので、口頭だけで伝えることの難しさを勉強になりました。
この記事をご覧になっている方が、貴社の円滑なリスクアセスメントのため、そして世の中の安全の向上のために、このポイントを認知していただけたら、書いた甲斐があります(笑)。
現場で気づいたポイント:見落としがちな周囲の道具による危険源!
現場には、作業効率を上げるために様々な工具や機材が置かれていると思います。ここでは、オペレーターの作業効率のため、あるいは保全の方の作業改善のためと思っていた道具が、実は危険な事象を引き起こす可能性が予見されるものになりうる、という発見についてご紹介します。



え、これもリスクアセスメントシートに書かなきゃいけないの?
今回の設備の中に、普通に作業していたら絶対に自力では届かないような高い場所に、作業するためのキャットウォークと作業スペースが作られているものがありました。オペレーターにどうやって使うのか、何に使うのかをヒアリングしたのですが、「保全の方がメンテナンスで使っているから分からない」という情報しか得られませんでした。
そんな状況の中、ジュンイチロウさんは最初に「はしご(脚立)」を探されていました。すると、機械のすぐ横に、立てかけられたはしごが見つかったんです。つまり、このはしご(脚立)を使うことで、普通なら危険源に到達できないような場所に、簡単に届いてしまう状態が作り出されていました。
リスクアセスメントの鍵:「予見可能な誤使用」と「意図した誤使用」の区別
ここでぜひ押さえておきたい、リスクアセスメントをする上で欠かせない考え方として、「予見可能な誤使用」と「意図した誤使用」を区別しなければならない、ということがあります。
- 予見可能な誤使用
- 意図した誤使用
設備そのものはしっかりと安全対策がされていても、ユーザー側で近くによじ登れるような台や柵、はしごなどがあったがために、危険源に到達できてしまう場合、それは「予見可能な誤使用」としてリスクアセスメントに記載すべき危険な事象になります。今回のはしご(脚立)の例がまさにそうで、機械メーカーは専用のはしごを用意していない状態で、ユーザーに高所作業の方法を任せていたのだと推測されます。
本来ならば、このはしごが、行われるべき通常のメンテナンスだけに使用されるのであれば問題はないのですが(墜落用制止器具やヘルメット等の保護対策は本来必要です)、先ほどもお話ししたように、人間はついつい近道行動をしたがります。今回の設備は、通常であれば届かない場所に危険源や危険な事象があり、はしごを使うことでここに到達できてしまう状況でした。
「予見可能な誤使用」として考慮すべき範囲
では、「意図した誤使用」とは、どこまでの範囲を指すのでしょうか?「はしご(脚立)を持ってきて使おうと考えた時点で、それはもう『意図した誤使用』じゃないの?」という声が聞こえてきそうですね。
でも、本来このような工具類は、保全の方専用の工具室などに保管されているのが一般的です。つまり、通常は日常的な生産作業ではしごを使うためには、わざわざ保全の方に連絡して、工具室の鍵を開けてもらい、はしご(脚立)を取りに行って、初めて使用できて、さらに使用後には片付けまで行わなければ使えない状態、ということになります。ここまでするのは、明確な「意図」を持った行動ですよね。つまり、オペレーターが「わざわざ」行わなければならないような誤使用のことを、「意図した誤使用」というのです。
それ以外の、機械の近くに置いてある工具やはしご(脚立)、台座などの利用は、「予見可能な誤使用」としてリスクアセスメントでは考慮しなくてはならないんです。非常にややこしいので、他にも例を挙げてみますね。
例1: 開けてはいけない扉がトルクスねじで固定してあったのに、オペレーターの作業台にトルクスドライバーが置いてある状態。
例2: 安全柵の側面にカートや、よじ登ることが可能な台座(構造物)が置いてあり、安全柵自体は高さ2メートルあるのに、台座があるために安全柵の内部に侵入できる可能性が予見される状態。
ここまでで、「意図した誤使用」と「予見可能な誤使用」の違いはご理解いただけたでしょうか。あまりここに関して詳しく書かれている記事を見ることは珍しいかと思いますし、これは実際にリスクアセスメントをやってみて初めて見えてくるような疑問だと思います。
今回私も実際にやってみて、人間の意志や意図をどこまで考慮すればいいのか疑問に思いましたが、ジュンイチロウさんは現場のキャットウォークを見るなり、すぐにはしご(脚立)を探されていたので、「これは予見可能な誤使用の可能性を考えているんだな」ということが分かりました。
ポイントとしては、「とにかく簡単に持ってこれてしまう、使えてしまう状況なのか」、それとも「わざわざ持ってこなければ使えない状況なのか」を基準に考えると分かりやすいかと思います。ぜひリスクアセスメントでは、機械本体だけでなく、オペレーターの作業台にある工具や、機械の周りに置いてある台座やはしごなどもチェックしてみてください!
今回の学びのまとめ
今回のリスクアセスメントで特に重要だと感じた学びをまとめると、以下の3点になります。
- 安全機器の「無効化」に注意すること
-
安全機器がただ見た目についているということに騙されないようにしましょう。
簡単に無効化ができてしまう状態では、安全機器として十分な機能が果たせていない可能性が予見されるため、場合によっては買い替えが必要になることもあります。安全機器は故障することもありますが、基本的に一度設置すれば長く使えるように設計されていますので、最初からしっかりと信頼できる安全機器を選ぶことが、結果的に一番コストパフォーマンスが良い方法なんです。
- 制御パネルは適切な位置に、制御盤は必ず確認できるようにすること
-
制御盤は、機械全体をしっかりと見渡せる場所に設置することが大切です。
レイアウト変更があったとしても、少なくとも安全柵の内側に残ったままにならないように十分注意してください。そして制御盤は、リスクアセスメントにおいて目に見えない危険である感電から身を守るために、非常に重要な部分になります。制御盤の中身を確認できなければ、適切なリスクアセスメントはできない、と言っても過言ではありません。
- 周囲の道具にも気を配ること
-
「意図した誤使用」と「予見可能な誤使用」の違いをしっかりと意識して、リスクアセスメントを行いましょう。
リスクアセスメントで最もやってはいけないことの一つは、重大な危険な事象を見落としてしまうことです。万が一事故が起こってしまったときに、「周囲の道具を使った危険な事象なんて想定していませんでした…」では済まされません。危険な事象を想定する範囲を、今回のポイントを踏まえてしっかりと確認することを強くお勧めします。
最後に
リスクアセスメントは、普段意識していないと見落としてしまいがちな危険な事象が本当にたくさんあります。今回は少し専門的な話も出てきたので、詳細まで書かせていただきましたが、やはり重要なのは、様々な経験を積むことと、安全規格に沿った知識をしっかりと身につけることだと感じています。
最初から未経験者だけでリスクアセスメントを行うことが、いかに危険かということもお分かりいただけたかと思います。不安があるなら、機械安全専門のコンサルタントに、まずは依頼して一緒に行うことを強くお勧めします。



「機械安全コンサルできます」という、暴利な中間マージンを抜くだけの業者が多いので本当に気をつけてください。
私もこれからも、リスクアセスメント初心者の皆さんや、これからリスクアセスメントを始める方が見落としがちなポイントを発信していきますので、ぜひ参考にしていただけたら嬉しいです。
次回は最終日! 引き続き、現場での学びや気づきをシェアしますので、どうぞお楽しみに!
それではまた!
ガンタでした!