EN 60204-1:2018+A1:2025 変更点を解説|具体的にどのような内容が追加・変更されたのか?実務にどう影響するのか?

こんにちは、ジュンイチロウです!お久しぶりです。

今回は、機械や電気設備の安全に関わる皆さんにとって、非常に重要なニュースをお届けします。

以前ご紹介した、ガンタ君のリスクアセスメントに関する記事はもうお読みいただけましたか? 今回の内容は、その安全確保とも深く関わってきますので、もしよろしければ併せてお読みいただけますと嬉しいです。

さて、実は皆様のお仕事に密接に関わる安全規格、EN 60204-1 に大きな動きがありました。表題にもある通り、2025年4月にCEN/CENELEC からAmendment「A1:2025」が正式に発行されたのです。

このAmendment A1:2025 では、一体どのような点が変更・追加されたのでしょうか?

本記事では、その核心に迫り、皆様が実務で困らないよう、変更内容を分かりやすく解説していきます。

このブログでわかること

このブログでわかること

  • EN 60204-1 Amendment A1:2025 の概要
  • 具体的にどのような内容が追加・変更されたのか
  • これらの変更が実務にどう影響するか


この記事が皆様の業務にお役立ていただければ幸いです。

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目次

EN 60204-1:2018+A1:2025 とは

EN 60204-1 の正式名称と位置づけ

EN 60204-1の正式名称は、”Safety of machinery – Electrical equipment of machines – Part 1:General requirements” といい、日本語では「機械類の安全性−機械の電気装置 − 第1部:一般要求事項」となります。

この規格の特筆すべき点として、機械指令 2006/42/EC と 低電圧指令 2014/35/EU、これら二つの重要なEU 指令の整合安全規格となっている点が挙げられます。これは、機械の電気装置に関する安全要求事項を満たす上で、EN 60204-1 に適合することが、これらの指令への適合を示す強力な根拠となることを意味します。

実務での重要性

EN 60204-1(およびその国際版であるIEC 60204-1)は、産業機械の電気制御盤の設計や、機械のリスクアセスメントを行う上で、実務において非常に広く活用されている重要な安全規格です。国内規格では、JIS B 9960-1:2019 として整合化されており、日本国内でもこの考え方が広く取り入れられています。

「A1」とは何か? Amendment(追補)について

さて、EN 60204-1+A1:2025 のように規格名の末尾に付いている「+A1」の「A」は、”amendment” を示しており、日本語では「追補」や「修正」といった意味になります。「A1」は、その規格に対する最初の追補版であることを示しています。つまり、EN 60204-1 の本文に対して、後から追加・変更された内容が「A1」としてまとめられている、ということです。

IEC 規格との関係性

今回のEN 60204-1+A1:2025 は、もともと国際規格である IEC 60204-1:2016/AMD:2021 を基にEN規格としてCEN/CENELEC が採択し発行したものです。そのため、その内容はIEC 版のAMD:2021 とほぼ同じと考えて良いでしょう。

もし、すでにIEC 60204-1:2016/AMD:2021 の内容をご存知であったり、学習されていたりする場合は、今回のEN 規格のA1追補版も同様の内容であるとご理解いただけます。

EN 60204-1:2018+A1:2025 具体的な変更点

Amendment(追補)が発行されたとなると、「具体的に何が変わったの?」「私たちの実務に何か大きな影響があるの?」と気になっている方も多いかと思います。

ご安心ください。結論からお伝えすると、今回のA1 追補による変更点は、皆様の実務にほとんど大きな影響を与えない内容となっています。拍子抜けされた方もいらっしゃるかもしれませんが、これが正直なところです。

ジュンイチロウ

実務に影響が出たらどうしよう?

ほとんど影響がないので、安心してくださいね

では、具体的にどのような点が変更されたのか、一緒に見ていきましょう。

4章 一般要求事項

4.4.2 電磁両立性

4.4.2 項の第2段落を削除する。
既存の注記を「注記 1」に名前を変更し、注記 1 の後に、以下の新しい注記 2 を追加する。
注記 2 付属書 H には、電磁的影響の影響を軽減するための対策の例が記載されています。

4.4.5 高度

4.4.5 項の第2段落のハイフンで区切られた部分の既存のテキストを、以下の新しいテキストに置き換える:
高高度で使用される装置については、例えば、以下のパラメータの変化を考慮する必要がある:
4.4.5 項の第3段落の冒頭に、以下の新しいテキストを追加する。
他のコンポーネントのパラメーターも高度によって変化する可能性がある。

6章 感電保護

6.3.1 故障保護

注記 1 のテキストを以下の新しいテキストに置き換える。
接触電圧による有害な生理的影響のリスクは、さまざまな要因によって異なる。これらの要因には、接触電圧の値、曝露の可能性のある時間、環境要因、皮膚の状態などが含まれるが、これらに限定されない。

8章 等電位ボンディング

8.2.1 保護ボンディング回路 一般

8.2.1 項の4番目の箇条書き項目を、以下の新しいテキストで置き換える:

  • 機械の保護接地用に使用される導電性構造部品
8.2.2 

8.2.2 項の第5段落の既存のテキストを、以下の新しいテキストに置き換える:
各保護導体は、以下の条件を満たさなければならない:

  • マルチコアケーブルの一部である、または
  • 線導体と同じ筐体内に収められている、または
  • 断面積が
    • 機械的損傷に対する保護が提供されている場合、2.5 mm2 以上の銅または 16 mm2 以上のアルミニウム
    • 機械的損傷に対する保護が提供されていない場合、4 mm2 以上の銅または 16 mm2 以上のアルミニウムであること。

注記 1 保護導体に金属を使用することは排除されない。
8.2.2 項の第7段落(「機械の導電構造部品」)の最初の箇条書きの項目を削除する。

9章 制御回路及び制御機能

9.2.3.2 スタート

9.2.3.2 項の第4段落を、以下の新しい文章に置き換える。

危険な機械のオペレーション開始前に、音響及び/又は視覚による警告信号を発する措置を、リスクアセスメントの際に検討しなければならない。リスクアセスメントにより、そのいずれか、あるいはその両方が必要であると判断された場合、これらの警告信号の放出レベルは、意図した環境に適したものでなければならない。

9.2.3.4.3 非常スイッチングオフ

9.2.3.3.4 項の最初の段落において、「IEC 60364-5-53:2001」を「IEC 60364-5-53:2019」に置き換える。

9.2.4.1 ケーブルレス制御システム 一般要求事項

9.2.4.1 項の 2段落目を、以下の新しい文章に置き換える。
CCS の安全機能がデータ伝送に依存する場合、伝送の信頼性を考慮しなければならない。
既存の注記 3 を、以下の新しい文章に置き換える:
注記 3 IEC 62745 は、機械の電気装置用のケーブルレス制御システムについて規定している。

9.2.4.8 非常停止の解除

9.2.4.8 項の第3段落を、以下の新しい文章に置き換える:
リスクアセスメントにより、携帯型ケーブルレスオペレーター制御ステーションの非常停止アクチュエーターのリセットが適切ではないことが判明した場合、1 つ以上の補助的な固定式リセット装置を設けること。

10章 オペレータインタフェース及び機械に取り付けた制御機器

10.8.2 非常スイッチングオフ機器の種類 

10.8.2 項の既存の2番目の段落を、以下の新しいテキストで置き換える:
機器は、直接開路動作機能を有しなければならない(IEC 60947-5-1:2016 の附属書Kを参照)。

11章 コントロールギヤ:配置、取付け及びエンクロージャ

11.4 エンクロージャ、扉及び開口部

11.4 項の第9段落において、「harmful 有害な」の最初の出現箇所を「detrimental 有害な」に置き換える。

「detrimental」は知覚的・想像的なものを含むあらゆる否定的な意味合いで、より公式な表現です。「harmful」は実際の損害や傷害を示す、より具体的な意味合いを持ちます。

12章 導体及びケーブル

12.3 絶縁被覆

12.3 項の第1段落において、「should be sought」を「shall be considered」に置き換える。

13章 配線

13.2.3 中性線の識別

13.2.3 項の最初の段落において、「IEC 60445:2010」を「IEC 60445:2017」に置き換える。

13.5.2 金属製の剛性コンジット及び継手

13.5.2 項の第1段落の既存の2番目の文を、以下の新しい文で置き換える:
異なる金属の間でガルバニック(電食)作用が発生する可能性がある場合、これらの金属の組み合わせは使用してはならない。

ガルバニック腐食 とは
異なる金属が接触し、電解質溶液(水など)が存在する場合に発生する腐食。
腐食の進行は、金属のイオン化傾向(電位差)によって決まり、イオン化傾向が大きい金属が優先的に腐食する。
例えば、鉄と亜鉛が接触していると、亜鉛が腐食し、鉄は保護されるような事象です。

16章 マーキング、警告標識及び略号

16.4 電気装置のエンクロージャのマーキング

16.4 項の既存の2番目の箇条書きを削除

18章 検証

18.1 一般

18.1 項の2番目の段落の末尾に、以下の新しい文を追加する:
手順に従うことができない場合、検証a) と b) を最初に実施しなければならない。

18.2.2 試験1 保護ボンディング回路の導通性の検証 

18.2.2 項の最初の段落において、「IEC 60364-4-41:2005」を「IEC 60364-4-41:2005+AMD1:2017」に置き換える。

18.2.3 試験2 故障ループインピーダンス及び過電流保護機器の適切性の検証

18.2.3 項の第2段落の a) の既存の 2 番目の破線リスト項目を、以下の新しいテキストに置き換える。

  • TN システムの場合は A.1.4、TT システムの場合は A.2.4 に準拠した測定
18.4  耐電圧試験

18.4 項の第 1 段落を削除し、新しい第1段落(旧第2段落)の後に、以下の新しい注記を追加する。
注記 IEC 61180 または IEC 61557-14 に準拠した試験装置を使用して、電圧試験を行うことができる。


まとめ:EN 60204-1:2018+A1:2025 追補版の実務への影響と将来展望

さて、EN 60204-1:2018+A1:2025 の具体的な変更点について見てきましたが、いかがでしたでしょうか?

今回のA1 追補による変更は、皆様の日々の実務に直ちに大きな影響を与えるものではないということがお分かりいただけたかと思います。まずはその点を踏まえていただければ幸いです。

しかしながら、EU の法規制は常に進化しています。現在、機械指令2006/42/EC から機械規則 (EU) 2023/1230 への移行が進められています。この新たな機械規則が本格的に適用される際には、今回追補された EN 60204-1:2018+A1:2025 が、新しい規則に対する整合安全規格となる可能性が十分に予見されます。

そのため、CE マーキング対応で必要となるテクニカルファイルを作成される際には、EN 60204-1 に関するテストレポートや評価において、最新である「+A1」版の内容も考慮して評価を進めておくことは、将来的な規則移行への備えとして有効かもしれません。

この記事が、EN 60204-1 のA1 に関する皆様の疑問解消の一助となり、今後の業務の参考になれば大変嬉しく思います。

最後までお読みいただき、ありがとうございました!

それでは、また次回の記事でお会いしましょう。

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