あらすじ
ISO/FDIS 14119:2021 は、機械の安全性に関する国際規格であり、安全関連部品の設計原則と選択について規定しています。この規格は、2013 年に発行されたISO 14119:2013 の改訂版であり、2021 年9 月に最終草案(FDIS) として公開されました。この規格は、機械の安全性を高めるために、インターロック機器の適切な選択と使用を促進することを目的としています。
インターロック機器とは、保護装置(例えば扉やカバー)の開閉や位置に応じて、危険な動作を制御する機器のことです。インターロック機器には、電気的なものや機械的なものがありますが、ISO/FDIS 14119:2021 では、特に電気的なインターロック機器に焦点を当てています。電気的なインターロック機器には、type 1 からtype 4 までの4 つのタイプがありますが、この規格では、type 5 という新しいタイプを導入しています。
type 5 インターロック機器とは、type 4 インターロック機器に加えて、保護装置の識別情報を送信する機能を備えたインターロック機器のことです。この機能により、保護装置が正しく取り付けられているかどうかや、保護装置が互換性のあるインターロック機器と組み合わされているかどうかを確認することができます。また、保護装置の交換や追加が行われた場合にも、自動的にシステムが再設定されることができます。これにより、インターロック機器の不正操作や故障による事故を防止することができます。
ISO/FDIS 14119:2021 附属書では、フォールトマスキングという問題について説明しています。フォールトマスキングとは、一つの制御回路に複数のインターロック装置が直列につながっているときに起こりうる現象で、インターロック装置の故障が制御回路の故障やリセットを防いだり、隠したりすることです。これは、SRP/CS の信頼性や効果を低下させる可能性があります。
ISO/FDIS 14119:2021 は、現在FDIS 段階であり、2024 年初頭に正式な国際規格として発行される予定です。この規格は、インターロック機器を設計・製造・販売・使用するすべての関係者にとって重要な参考資料となります。
ISO/FDIS 14119:2021 とは
ISO 14119:2013 とは
機械指令 2006/42/EC 整合規格 EN ISO 14119:2013
機械の安全性には、ガードとインターロック装置というものがあります。ガードとは、危険な機械部分を覆って人が触れないようにするものです。インターロック装置とは、ガードが開いているときには機械を止めるようにするものです。このインターロック装置の使い方について、国際的な規格があります。それが ISO 14119:2013 という規格です。
この規格は、インターロック装置の種類や選び方、無効化されないようにする方法などを示しています。欧州では、この規格を EN ISO 14119:2013 として採用しています。そして、この規格は機械指令 2006/42/EC という指令で整合化されています。機械指令とは、欧州で販売される機械の安全性を保証するためのものです。EN ISO 14119:2013 は B (B-2) 規格と呼ばれるもので、機械の安全性に関する一般的な原則を示すものです。
ガードと連動するインターロック装置を使って安全性を確保する機械は、欧州で販売するためには CE マークを付ける必要があります。CE マークを付けるには、EN ISO 14119:2013という規格に沿ってインターロック装置の設計と選択をしなければなりません。
ISO 14119:2013 と ISO/FDIS 14119:2021 の関係
現在、新しいドラフト版がISO/FDIS 14119:2021として開発されており、これは「最終版のテキストが受け取られたか、正式な承認のために登録された」という意味の 50.00 というバージョンになっています。しかし、このドラフト版もまだ正式な規格ではないので、将来変更される可能性があるという注意喚起をしています。
ISO 14119 は機械の安全性に関する規格で、ガードとインターロック装置の使い方について機械の設計者に教えるために作られたものです。この規格はJIS B 9710:2019 で整合化されています。
- ISO 14119:2013
-
Safety of machinery — Interlocking devices associated with guards — Principles for design and selection
- JIS B 9710:2019
-
機械類の安全性−ガードと共同するインターロック装置−設計及び選択のための原則
FDIS とは
FDIS とはDIS 版で投票がされた後、新たに修正されたDIS 版はFDIS (Final Draft International Standard) として投票国に送られ、最終的な承認投票(賛成か反対か)が行われます。FDIS 版が承認されると、ISO は自動的にその文書をFDIS 版の承認後60 日以内に正式なISO 規格として発行するよう指示します。
ISO/FDIS 14119:2021 で何が変わるのか?
ISO/FDIS 14119:2021 はISO 14119:2013 と比べて主に下記5つの内容がアップデート(改訂)されています。
変更点
- ISO/TS 19837「機械の安全性-トラップ式キーインターロック装置 – 設計および選定の原則」が、新たにAnnex L として統合され、「type 5 インターロック装置 – キーインターロック装置に関する具体的な要求事項」が盛り込まれた
- 「type 5 インターロックシステム」と「トラップキーインターロックシステム」が定義された
- ISO 14119:2013 表4 は改良され、「インターロック装置のタイプに応じて、予見可能な無効化の動機が存在し続ける場合の追加措置」と改称された
- 故障除外 (Fault exclusion) の項目がtype 別に規定され細分化され、ISO 14119:2013 よりも厳しくなった
- ISO/TR 24119「機械類の安全性-潜在的自由接点を持つガードに関連するインターロック装置のフォールトマスキング直列接続の評価」を新たにAnnex K に統合された
type 5 インターロック機器とは
インターロック機器とは
この記事が扱っている「インターロック機器」と「インターロック付きガード」という用語の定義が、ISO 12100 とISO 14119 という2つの規格にあることを示しています。ISO 12100 は、機械の安全性を確保するための基本用語や方法論を定めた規格です。ISO 14119 は、ガードに関連するインターロック装置の設計や選択方法に関するガイダンスを提供する規格です。
- インターロック装置(interlocking device)インターロック(interlock)
-
特定の条件(一般的にはガードが閉じていない場合)の下で危険な機械機能の運転を防ぐことを目的とした機械装置、電気装置又はその他の装置
- インターロック付きガード(interlocking guard)
-
機械の制御システムと一緒に次のように機能するインターロック装置が付加されたガード
− ガードによって“覆われた”危険な機械機能は、ガードが閉じるまで運転できない
− 危険な機械機能の運転中にガードが開くと、停止指令が発生する
− ガードが閉じると、ガードによって “覆われた” 危険な機械機能は運転することができる。ガードが閉じたこと自体によって危険な機械機能が起動しない
インターロック付きガードの例
インターロック付きガードは、機械の安全性を高めるための重要な装置です。インターロック付きガードは、機械の危険源を囲んでいるガードに連動しており、ガードが閉まっていないと、機械は動きません。もし機械が動いているときにガードが開けられたら、機械はすぐに止まります。これにより、オペレーターがガードを開けて手を入れたり、物を落としたりしても、機械に巻き込まれたり切断されたりする危険を防ぐことができます。ただし、ガードが閉まっても、自動的に機械が動き出すわけではありません。これにより、作業者はガードを開ける前に機械を停止させる必要があります。
インターロック付きガードのメリットは何でしょうか?
まず、作業者がガードを開けて危険源に触れることを防ぎます。これは、作業者が意図的にガードを開けたり、誤ってガードを開けたりした場合にも有効です。また、作業者がガードを閉め忘れても、機械は動かないので、安全性が確保されます。さらに、インターロック付きガードは、作業者が機械の動作状況を確認することを促します。なぜなら、ガードを閉めるだけでは機械が動き出さないからです。作業者は、スイッチやボタンなどの操作装置を使って、機械の動作を開始する必要があります。
インターロック付きガードの設計や選択には、いくつかのポイントがあります。例えば、インターロック装置は、ガードと一体化しているか、あるいはガードから取り外すことができないようにする必要があります。また、インターロック装置は、電気的なものだけでなく、機械的なものがあります。インターロック装置の種類は、機械の特性や使用環境に応じて適切に選択する必要があります。さらに、インターロック装置は、故障や操作ミスによって誤動作しないように信頼性の高いものを選ぶ必要があります。
インターロック付きガードは、単純な仕組みですが、大きな効果を発揮します。しかし、インターロック付きガードだけでは十分ではありません。作業者自身が、安全意識を持って正しく操作することが重要です。また、インターロック付きガードの状態や動作を定期的に点検することも必要です。
インターロック機器 分類 概要
インターロック機器 分類
type 1 から5 インターロック機器についてはISO/FDIS 14119:2021 で下記のように定義されています。
- type 1
-
コード化されていない
アクチュエーターによる機械的に作動するポジションスイッチを備えたインターロック装置 - インターロック機器の例
-
コード化されていないヒンジ型スイッチ
- type 2
-
コード化された
アクチュエーターによる機械的に作動するポジションスイッチを備えたインターロック装置 - インターロック機器の例
-
コード化されたトング型スイッチ
- type 3
-
コード化されていない
アクチュエーターによる非接触式のポジションスイッチを備えたインターロック装置 - インターロック機器の例
-
コード化されていない安全近接スイッチ
- type 4
-
コード化された
アクチュエーターによる非接触式のポジションスイッチを備えたインターロック装置 - インターロック機器の例
-
コード化された RF-ID 安全スイッチ
- type 5 (ISO/TS 19837)
-
トラップキー式インターロック機器
トラップキーインターロック装置の一部で、所定のシステムにおいて1つ以上のキーをトラップまたはリリースすることで機能を果たす装置
- インターロック機器の例
パット見ではtype 2 トング式インターロック機器はコード化されていないように見えますが、実はトング自身の姿や形で一応コード化されていることになります。ただしコード化レベルは低く、トングの形状やサイズによってインターロックする機器を限定する程度です。このようなインターロック機器は、安全性や信頼性が高くないという欠点があります。また、トングの取り付けや取り外しが面倒で、作業効率が低下する可能性もあります。
type 3 インターロック機器は昔はありましたけど、使い勝手が悪く最近は見かけなくなりました。このタイプのインターロック機器は、電気的な出力を持ち、正しく装着されたときに電気的な信号を送る仕組みです。しかし、この仕組みが不安定になることが多かったです。また、電気的な信号を処理するために追加の回路や装置が必要で、コストやメンテナンスが高くなるという問題もありました。
トラップキーのキー側でキー自身の姿や形でコード化されている場合と、キーにRF-ID タグを埋め込む場合があります。前者の場合は、キーの形状やサイズがインターロックする機器と一致する必要があります。この方法はシンプルで安価ですが、キーの数が増えると管理が煩雑になります。後者の場合は、キーに埋め込まれたRF-ID タグの情報がインターロックする機器と一致する必要があります。この方法は高度で柔軟ですが、RF-ID タグやリーダーの故障や干渉によって信号が読み取れないことがあるかもしれません。
インターロック機器 概要
下記に定義されたインターロック機器のタイプとその作動原理とアクチュエーターを示します。
インターロック技術は、多様な技術的側面を含んでいます。インターロック装置は、ガードとインターロック装置との間のリンクの性質 (type 1 から5)、またはインターロック装置の出力システムの技術的タイプ(電気機械式、空気式、電子式など)など、さまざまな基準によって分類できます。
インターロック装置には、ガードの位置監視機能があり、ガードが閉じているかどうかを検知し、ガードが閉じていない位置にあるときに停止命令を発生させます。インターロック装置は、他の機能の制御にも使用できます。例えば、アクセスが可能になる前にブレーキを作動させて危険な機械機能を停止させるなどです。一部のインターロック装置には、危険な機械機能が存在する間はガードをロックしておくガードロック機能もあります。ガードロック装置の状態監視機能は、ガードロック装置がかかりあいをしているか解放されているかを監視し、適切な出力信号を発生させます。
原理の例 | アクチュエーターの例 | ガードの監視 | タイプ | ||
機械式 | 物理的接触/力 | コード化 なし | 回転カム | 直接的 | type 1 |
リニアカム | |||||
ヒンジ | |||||
コード化 あり | トング | 直接的 | type 2 | ||
非接触 | 誘導式 | コード化 なし | 適切な磁性体 | 直接的 | type 3 |
磁気式 | マグネット ソレノイド | ||||
静電容量式 | 適切なもの | ||||
超音波 | 適切なもの | ||||
光学式 | 適切なもの | ||||
磁気式 | コード化 あり | コード化マグネット | 直接的 | type 4 | |
RF-ID | コード化RF-IDタグ | ||||
光学式 | 光学式コード化タグ | ||||
機械式 トラップキー | コード化 あり | 形 | 間接的 直接的 | type 5 |
インターロック機器の種類を選ぶ主な基準は、インターロック機能によって決まります。インターロック機能は、ガードロック機能よりも優先されます。インターロック機能とは、特定の条件(通常はガードが閉じていない限り)において、危険な機械の動作を防ぐための機能です。ガードロック機能とは、電磁石などによってガードを閉じたままにするための機能です。
type 5 とは?
- type 5 インターロックシステム トラップキーインターロックシステム
-
安全機能、または、安全機能の一部を満たすシステムであって、鍵の授受によって連動する少なくとも2 つのトラップ付きキーインターロック機器から構成される
- type 5 インターロック機器
-
トラップ付きキーインターロック機器装置、トラップ付きキーインターロック機器の一部であり、所定のシステムにおいて1 つ、または、複数のキーをトラップまたはリリースすることにより機能を果たすもの
トラップキーインターロックシステムは、危険な場所や機器に安全に入るために使われるシステムです。キー操作スイッチとアクセスロックの間にキーを移動させることで、ガードロックやスイッチの動きを制御します。キーは、それぞれのデバイスにしか合わないように作られています。トラップキーインターロックシステムは、危険を減らすために、機器の操作の順序を決めておく必要があります。
また、トラップキーインターロックシステムキー受け渡し計画というものが必要です。これは、どんなキーをどこで使うかを決めるものです。キーにはコードがありますが、これは安全性を考えて決めます。 type 5 の装置は、違う種類のキーで2 つ以上動かせるか、または、キーは違う種類のtype 5 の装置を2 つ以上動かせます。
キーを使って危険な場所や機器に入ったり出たりするシステムで、キーは一つずつしかなくて、決まった順番で使わないといけないです。
type 5 故障除外 (Fault Exclusion)
ISO 13849-1 では、2 つのチャネルの SRP/CS を制御システムで監視する冗長性の概念が使用されています。監視は、チャンネルが故障したときに、制御システムを起動してマシンを停止させるために使用されます。この指定された冗長化チャンネル構造は、カテゴリー3 および4 で使用されています。
type 5 インターロック装置では、単一チャンネルのアーキテクチャーを使って安全装置を制御する方法がよく使われています。
この場合、制御システムで回路の故障を見つけることはできません。だから、起こりうる故障をすべて調べて、故障したら危険な状態にならないか、あるいは故障する可能性がとても低いかを確かめる必要があります。これは、部品を大きくしたり、試験したりすることで実現できます。 さらに、故障したら安全な状態になるように弱い部品をわざと作ることもあります。これは、他の部品に大きな負荷がかからないようにしたり、キーを無理やり使ってロックを壊そうとしたときにロックが外れないようにしたりするためです。
type 5 のインターロック機器については、ISO 13849-1のカテゴリー3、4は以下のいずれかにより達成することが求められるかもしれません。その時の対策は下記のいずれかになります。
- 2つのインターロック機器を実装することによって。
- 単一チャンネルのインターロック機器であって、関連するカテゴリーの挙動を達成するもの。
- 単一チャンネルインターロック機器によるもので、起こりうる全ての故障が評価され、危険側故障モードが排除されているか、技術的にありえない(可能性が高い)ことが証明されていること。
type 5 のシンボルと略語
type 5 インターロック機器には新たにシンボルと略語が追加されました。
- 1. キー
- 2. キーパス
- 3. キートラップ
- 4. キーリリース可能
- 5. 挿入されたキーで取り外し可能
- 6. キー取り外し
- 7. ロックされたアクチュエーター
- 8. ロック解除されたアクチュエーター
- 9. アクチュエーター取り外し
- 10. タイムディレイ機能
type 5 インターロック機器の取り扱い
type 5 インターロック機器は、複数の機器やシステムを連動させるための安全装置です。type 5 機器は 2つ以上の異なるコード化されたキーで操作することができ、また、 1つのキーで2つ以上の異なるコード化されたtype 5 機器の操作をできます。これにより、機器やシステムの起動や停止を一元的に制御することができます。
type 5 のインターロック機器を使用する場合は、取り付け場所での汚染度を考慮する必要があります。汚染度とは、機器に影響を与える可能性のある外部要因の程度を示す指標です。
type 5 のインターロック機器は、適切な対策(防塵カバーなど)を適用しない限り、粒子、切りくず、ほこりの侵入を防ぐことができないアプリケーションには不適切な場合があります。例えば、金属加工や木工などの作業では、大量の切りくずやほこりが発生します。これらの物質がインターロック機器に侵入すると、キーの挿入や回転が困難になったり、内部の電気回路がショートしたりする恐れがあります。そのため、このような環境では、汚染度に対応したインターロック機器を使用するか、防塵カバーなどの保護装置を取り付ける必要があります。
キーのインターロックシステムは、機器の安全な操作を確保するために使用されるシステムです。type 5 のインターロック機器は、機器の電源を切ると、キーが解放されるように設計されています。このキーは、別のインターロック機器に挿入することで、その機器の電源を入れることができます。このようにして、一度に一つの機器だけが動作するように制御されます。
キーの差し替えプランは、インターロックシステムのメンテナンスや改造の際に必要となります。キーの差し替えプランでは、以下の点を考慮する必要があります。
無効化の可能性を最小限にする追加措置
新しくなった無効化の可能性を最小限にする追加措置
インターロック装置のタイプに応じて「予見可能な無効化の動機が存在し続ける場合の追加措置」が下記の表のように改訂されました。
原則と方策 | type 1 | type 3 | コード化 | type 2コード化 | type 4コード化 | type 5||||
非ヒンジ式 | ヒンジ式 | – | 低/中 | 高 | 低/中 | 高 | 低/中 | 高 | |
追加のインターロック機器 and 確かさのチェック | R | R | R | R | X | ||||
届かないところに設置 | X | X | X | X | |||||
物理的な妨害 | X | ||||||||
隠れたところに設置 | |||||||||
状態監視 or サイクルテスト | X | ||||||||
アクチュエーターの非脱着式固定方法 | M | M | M | M | M | M | |||
ポジションスイッチの非脱着式固定方法 | R | R | R | R | R | R | |||
スイッチ and アクチュエーターの非脱着式固定方法 | X | M |
X M R の意味
- X 少なくともこれらの方策のうちの一つを適用
- M 必須
- R 推奨
- type 5 コード化レベル「中」のアクチュエーターは、重複したコードのアクチュエータが容易に入手できない場合には、コード化レベル「高」として扱うことができます
- トラップキーインターロック機器には適用されません
- コード化レベル「中」のアクチュエータが重複して設置されている場合は、本表ではコード化レベル「低」のアクチュエータとして扱います
- type 5 のインターロッキングシステムでは、アクセスロックとボルトロックにのみ適用されます
- 表はインターロック装置の無効化に対する適切な措置を選択するために使用されることを意図しています。リスクアセスメントに応じて、表示されたもののうち複数のものを適用することが必要かもしれません
コード化レベルとは
ISO 14119 は、保護装置のコード化(暗号)レベルを3つに分類しています。コード化されたアクチュエーターは、特定のポジションスイッチを作動させるために特別に設計された(例えば、形状や色など)アクチュエーターを意味します。コード化レベルは、アクチュエーターとスイッチの組み合わせの数や、偽造や操作の可能性によって決まります。
コード化レベル1 は、最も低いレベルで、アクチュエーターとスイッチの組み合わせが2 つ以下である場合に適用されます。このレベルでは、偽造や操作のリスクが高いため、保護装置の信頼性が低下する可能性があります。コード化レベル1は、単純な形状や色のアクチュエーターを使用する場合に該当します。
コード化レベル2 は、中間的なレベルで、アクチュエーターとスイッチの組み合わせが1000 以下である場合に適用されます。このレベルでは、偽造や操作のリスクが低減されますが、完全に排除されるわけではありません。コード化レベル2 は、磁気的なアクチュエーターを使用する場合や、形状や色の組み合わせを変えることでアクチュエーターを区別する場合に該当します。
コード化レベル3 は、最も高いレベルで、アクチュエーターとスイッチの組み合わせが1000 以上である場合に適用されます。このレベルでは、偽造や操作のリスクがほとんどなくなります。コード化レベル3 は、電子的なアクチュエーターを使用する場合や、ランダムなコードを生成することでアクチュエーターを区別する場合に該当します。
ISO 14119 は、保護装置のコード化レベルを選択する際に考慮すべき要因として、機械の種類や用途、作業環境や条件、人間因子や人間行動などを挙げています。また、保護装置のコード化レベルは、機械のリスク評価やリスク低減策と一致している必要があります。保護装置の設計と選択においては、ISO 14119 の規定に従うことが重要です。
コード化レベル | コード化の種類 |
---|---|
Low 低 | 1 〜 9 |
Medium 中 | 10 〜 1000 |
High 高 | 1000 以上 |
無効化の防止策の具体例
ISO 14119:2013 で無効化の防止策の具体例
従来のISO 14119:2013 では無効化の防止策の具体例として、取り外し不可能な固定具として例示されていましたが、ISO/FDIS 14119:2021 ではこの内容が大きく変わりました。
- ISO 14119:2013 無効化防止策の例
-
- 溶接
- 接着
- 一方方向ネジ
- リベット
- ISO/FDIS 14119:2021 無効化防止対策の例
-
- 溶接
- ネジ山の接着(少なくとも熱を取り除く必要があるほど強力)
- 一方向ネジ
- リベット留め
- ネジのソケットの溝を磨耗させて、ネジが外れないようにする
- ボルトとネジの開口部を(プラスチック、樹脂、または金属ボールで)埋める
とくに、六角穴付きネジやボルト、開口部にピンが付いているネジ(セキュリティネジと呼ばれることもある)、
キャップ、ワックス、タンパー・プルーフ・ラベルなど、容易に取り外し可能な封止剤の使用などは、無効化防止対策としては認められません。
タンパー・プルーフ とは、何かが変更されたり、開けられたり、取り除かれたり、損傷したりしたことが分かるように作られたもののことです。例えば、薬品のパッケージなどががいとうします。
ISO/FDIS 14119:2021 で無効化防止対策としてみなされない例
ISO 14119:2013 ではグレーゾーンでギリOK の状態でしたが、以下の例はISO/FDIS 14119:2021 においては取り外し不可能な固定具としてはみなされません。六角穴付きボルトにピンがついたボルト(セキュリティネジと呼ばれることもあります)取り付け後にピンが曲がってしまった場合を除き、工具が容易に入手できるためです。
このようなボルトは、保護装置の取り外しを防ぐために設計されていますが、実際には効果が限られています。なぜなら、六角穴付きボルトにピンがついたボルト専用の工具はインターネットやホームセンターなどで簡単に購入できるからです。また、ピンが曲がってしまった場合でも、ペンチやニッパーなどで折り取ることができます。したがって、このようなボルトは取り外し不可能な固定具としては不適切です。
ISO/FDIS 14119:2021 では、取り外し不可能な固定具として認められるものは以下のように考えることができます。
- 取り外しに特殊な工具や手順が必要であり、一般的に入手できないもの
- 取り外しに時間がかかりすぎるか、あるいは取り外したことが容易に検出できるもの
- 取り外すと保護装置や機械に損傷を与えるもの
例えば、溶接やリベットなどの方法で保護装置を固定すると、取り外し不可能な固定具としてみなされます。また、特殊な形状やサイズのネジやナットを使用すると、一般的な工具では取り外せないため、取り外し不可能な固定具としてみなされます。さらに、保護装置にシールやラベルを貼ると、取り外したことが容易に検出できるため、取り外し不可能な固定具としてみなされます。
ISO/FDIS 14119:2021 では、保護装置の設計や選択において、取り外し不可能な固定具を使用することが推奨されています。これは、保護装置の取り外しを防ぐことで、作業者の安全性を高めるためです。しかし、取り外し不可能な固定具を使用するだけでは十分ではありません。保護装置の位置や形状も考慮する必要があります。例えば、保護装置が機械から離れすぎていると、作業者が保護装置を回避して危険箇所にアクセスできてしまう可能性があります。また、保護装置が作業者の視界や操作性を妨げると、作業者が保護装置を無視したり改造したりする可能性があります。したがって、保護装置は機械に適合させることが重要です。
無効化防止対策としてキャップを用いた例
現在、ISO 14119:2013 を適応して無効化防止対策としてキャップを用いる方法は有効ですが、ISO/FDIS 14119:2021 においては無効化防止対策としては認められません。しかし、無効化防止対策としてキャップを用いる方法は簡単で便利なのでスイッチの据え付け工数や一方向ネジの採用を大幅に削減できるので、現在時点ではとても有効な手段です。
このように、ISO 14119 の改訂によって無効化防止対策の要件が厳しくなりましたが、それに伴って安全性も向上しました。無効化防止対策は、機械の安全性を確保するために重要な要素です。機械の操作者やメンテナンス作業者が、意図的にもしくは偶発的にも安全装置を無効化することを防ぐことで、機械の危険な動作から身を守ることができます。ISO/FDIS 14119:2021 では、無効化防止対策の設計原則や評価方法が詳細に規定されています。また、無効化防止対策の実施にあたっては、リスクアセスメントや人間因子の考慮も必要です。
したがって、ISO/FDIS 14119:2021 に準拠するためには、無効化防止対策を適切に選択し、設計し、実装し、評価することが必要です。キャップを用いる方法は、ISO/FDIS 14119:2021 では無効化防止対策としては不十分ですが、他の方法と組み合わせることで有効な手段となる可能性があります。例えば、キャップの外側にロック機能を付けたり、キャップの取り外しに特殊な工具を必要とするようにしたりすることで、無効化防止対策のレベルを高めることができます。また、キャップを用いる場合でも、定期的な点検や教育を行うことで、操作者やメンテナンス作業者の意識を高めることも重要です。
type 5 機器の無効化の可能性を最小限に抑えるための追加の対策
type 5 機器はキーを用いたインターロックシステムのため、キー自体にコード化が求められます。type 5 のコード化は、オペレーターがキーを自由に用いて違うシステムのインターロックを無効化(解除)を防止することを意図しています。このようなコード化は、ISO/FDIS 14119:2021 の規格に従っています。コード化されたキーは、特定の機器やシステムに対応しており、他のものと互換性がありません。コード化されたキーは、物理的な形状やサイズだけでなく、電気的な特性や信号も含んでいます。
コード化されたキーを用いることで、機器やシステムの安全性が向上します。オペレーターは、自分が操作する機器やシステムに適したキーを持っていることを確認できます。また、不正な操作や誤操作を防ぐことができます。コード化されたキーは、インターロックシステムの信頼性や効率性も高めます。インターロックシステムは、機器やシステムの動作状態に応じて、キーの挿入や抜き取りを制御します。これにより、オペレーターは、必要なときにだけインターロックを解除できます。
キーコーディング
type 5 機器にはキーコーディングが必要です。キーコーディングとは2 つ以上の機器が意図せずに同じキーを共有することを防ぎ、それが危険をもたらすことがないようにすることを目的としています。例えば、特定のマシンをシャットダウンし、安全なアクセスを可能にするキーは、他のマシンへのアクセスや制御を許可してはなりません。
キーの保持力
差し込んだ状態のtype 5 機器からキーが容易に取り外せないようにするため、250 N 未満の力ではType 5 機器からキーを取り外すことができないようにしなければなりません。キー自体を含む、キーを固定するためのすべての部品は、キーにかかる力は少なくとも 5 Nm 以上耐えられなければなりません。さらに、5 Nm 以上の値では、キーが装置から折れても安全機能が失われることがないようにしなければなりません。
キーの複製
type 5 インターロック機器は、オリジナルのキーを製造者以外が容易に複製できないように設計されていなければなりません。(例えば、ハンドツールや鍵屋さんを使ってできるものはNGです。)
スイッチ断路器
スイッチ断路器のロックへの接続は、形状によって行うものとします。ロックとスイッチ断路器の間の力の伝達は直接回路動作機構によるものとします。接続部と伝達部は、ロータリーキーを使用した場合は 5 Nm のトルクに、リニアキーを使用した場合は 250 N の引張力にさらされても、損傷することなくそれらの力に耐えられること。スイッチ断路器は、作動シャフトとそのロックへの取り付け部が中心軸上にあり、シャフトが曲げ荷重にさらされないような方法で接続しなければなりません。作動軸のすべての接続部は、自己緩みに対して保護されていなければなりません。
トラップキー式インターロックシステムの間違い
写真のようなトング式インターロックスイッチは、機械の安全を確保するために使われる装置です。しかし、このスイッチはtype 2 コード化レベル Low 低のスイッチであり、ISO/FDIS 14119:2021 type 5 インターロック機器として使えません。なぜなら、このスイッチには以下のような欠点があるからです。
不適合ポイント
- キーコーディングされていない(複製できる・使い回しができる)
- キーコーディングとは、キーとスイッチの形状や配置を一致させることで、正しいキーでしかスイッチを操作できないようにすることです。キーコーディングされていないスイッチは、同じ形状のキーであればどれでも開閉できるため、不正な操作や誤作動のリスクが高まります。
- キー保持力がない(容易に取り外しができる)
- キー保持力とは、キーをスイッチに差し込んだときに、キーがスイッチから抜け落ちないようにする力のことです。キー保持力がないスイッチは、キーを引っ張れば簡単に取り外せるため、機械が動作中でもスイッチを解除できてしまいます。これは、機械の安全を脅かす危険な行為です。
- トングが普通のネジで固定されている(容易に取り外しができる)
- トングとは、キーを差し込む部分のことです。トングが普通のネジで固定されているスイッチは、ドライバーなどの道具でネジを外せばトングを取り外せます。トングを取り外すと、スイッチは常に開いた状態になります。これは、機械の安全回路を無効化する危険な行為です。
以上の理由から、写真のようなトング式インターロックスイッチはISO/FDIS 14119:2021 type 5 インターロック機器として使えません。このようなスイッチを使っている場合は、速やかに適切なインターロック機器に交換する必要があります。
ここまでお読みくださいましてありがとうございました。次回は 「フォールトマスキング・故障の除外の解説」にすすみます。